北欧神話の「天国」とはどのような場所?

北欧神話において、「天国」に相当する概念はあるのでしょうか?
キリスト教の影響を受ける以前の北欧神話には、明確な「天国」という概念は存在しませんでした。
しかし、神々が住むアスガルドや、戦士たちが死後に赴くヴァルハラ、平和な魂が向かうとされるフォルクヴァングなど、
死後の世界として天国に近いと考えられる場所はいくつかあります。
この記事では、北欧神話における「天国」の概念に近い場所や、その役割について詳しく解説していきます。

 

 

北欧神話における「天国」に近い場所

北欧神話には、キリスト教のような「神に認められた者だけが行く楽園」という明確な天国の概念はありません。
しかし、死後に魂が赴くとされる場所はいくつか存在します。

 

神々の住む「アスガルド」

アスガルドは、北欧神話において神々が住まう神聖な領域です。
主神オーディンをはじめとするアース神族が暮らし、壮麗な宮殿や館が立ち並んでいます。
天上にあるとされ、人間の世界であるミッドガルドとはビフレスト(虹の橋)によって繋がれています。
ただし、アスガルドは人間の魂が死後に向かう場所ではなく、あくまで神々の世界なのです。

 

戦士の魂が集う「ヴァルハラ」

戦場で勇敢に戦い、名誉ある死を遂げた戦士たちは、オーディンの宮殿であるヴァルハラへと迎えられます。
ここでは、死後も戦士としての訓練が続き、ラグナロク(神々の終焉の戦い)に備えています。
ヴァルハラに入ることは名誉とされ、戦士たちは日中は戦い、夜には宴を楽しむという生活を送ります。
まさに、戦士にとっての理想郷といえる場所なのです。

 

平和な死者が向かう「フォルクヴァング」

戦士だけでなく、穏やかに亡くなった者たちが向かう場所もあります。
女神フレイヤが治めるフォルクヴァングは、戦死者の半分が迎えられるとされる地で、
ヴァルハラと並ぶ死後の楽園の一つです。
ヴァルハラが戦士向けの場所であるのに対し、フォルクヴァングはより平和な世界であると考えられています。

 

北欧神話における死後の行き先

北欧神話では、死後の行き先は生前の生き方によって決まるとされています。
では、どのような死に方をすれば、どこへ行くのでしょうか?

 

戦士たちの最終目的地

・戦場で勇敢に戦い、名誉ある死を遂げた者 → ヴァルハラ または フォルクヴァング
・戦場以外で自然に死んだ者 → ヘルヘイム(後述)

 

ヘルヘイム—天国とは対極の死者の国

天国とは正反対の世界として、死者の国であるヘルヘイムがあります。
ここは死者の女王ヘルが支配し、自然死した者や病気で亡くなった者の魂が行く場所とされています。
キリスト教の「地獄」と混同されることもありますが、ヘルヘイムは苦しみの場ではなく、
あくまで死者が暮らす「冥界」のような存在です。

 

まとめ

北欧神話には、キリスト教的な「天国」の概念は存在しませんが、神々が住むアスガルドや、
戦士たちが迎えられるヴァルハラ、平和な魂が行くフォルクヴァングなど、天国に近い場所はいくつかあります。
死後の行き先は生前の行いによって決まり、名誉ある死を遂げた者には戦士の楽園が、
そうでない者には別の世界が用意されているのです。
このように、北欧神話の死後の世界は多様であり、それぞれの生き方に応じた運命が待っているのです。