北欧神話の作者って誰なの?

北欧神話は、ギリシャ神話やローマ神話と同様に、特定の「作者」が存在するわけではありません。古代の北欧の人々(ヴァイキングやゲルマン系民族)の間で、口承によって語り継がれた神話体系です。しかし、中世になって「エッダ」という形で文章に記録されることで、今日私たちが知る北欧神話が体系化されました。

 

本記事では、北欧神話の成立過程や、神話を記録した重要な人物について詳しく解説します。

 

 

北欧神話には「作者」はいない

北欧神話は、もともと北欧の人々が口承(語り伝え)によって受け継いできた物語です。そのため、ギリシャ神話におけるホメロスやヘシオドスのように、明確な「作者」とされる人物はいません。

 

北欧神話は以下のような過程を経て成立しました。

 

北欧神話の成立過程
  • 古代ゲルマン・スカンディナビアの口承伝承:詩人や語り部(スカルド)が神々の物語を語り継ぐ。
  • ヴァイキング時代(8~11世紀):神話が戦士たちの信仰や文化と結びつき、広まる。
  • キリスト教化(11世紀以降):キリスト教の影響で北欧神話が衰退し始める。
  • 13世紀に書き記される:スノッリ・ストゥルルソンらによって「エッダ」が編纂され、北欧神話が文書化される。

 

このように、北欧神話は長い年月をかけて形成され、最終的に文書化されたものなのです。

 

北欧神話を記録した重要な人物

北欧神話が現在の形で残っているのは、13世紀にアイスランドで記録された文献によるものです。その中でも、最も重要な記録者がスノッリ・ストゥルルソンです。

 

スノッリ・ストゥルルソン(1179-1241)

スノッリ・ストゥルルソンは、アイスランドの詩人・歴史家であり、「散文のエッダ(スノッリのエッダ)」を著した人物です。

 

スノッリ・ストゥルルソンの功績
  • 「散文のエッダ」:北欧神話の神々や英雄の物語をまとめた、最も重要な資料。
  • 「ヘイムスクリングラ」:ノルウェー王の歴史を記した歴史書。
  • 北欧詩(スカルド詩)の解説:詩人たちが使う韻律や技法についても記録を残した。

 

スノッリは、北欧神話を単に記録しただけでなく、詩的な表現や文化的背景も考慮してまとめています。そのため、彼の著作は神話研究の貴重な資料となっています。

 

「古エッダ」(詩のエッダ)とその記録者

スノッリの「散文のエッダ」と並ぶ重要な北欧神話の資料が、「古エッダ(詩のエッダ)」です。この文書は、作者不詳であり、口承詩を後世の人々がまとめたものと考えられています。

 

「古エッダ」の特徴
  • 成立時期:9~10世紀頃に口承され、13世紀に書き記された。
  • 記録者:アイスランドの修道士が記録したと考えられているが、特定の作者は不明。
  • 内容:神々の誕生やラグナロクを描いた詩が多く含まれる。

 

この「古エッダ」は、北欧神話の原典として非常に重要であり、スノッリ・ストゥルルソンもこの詩を参考にして「散文のエッダ」を執筆しました。

 

北欧神話の記録と影響

北欧神話は、スノッリ・ストゥルルソンをはじめとするアイスランドの記録者たちによって残されましたが、その影響は後世にも大きく広がりました。

 

中世の記録とキリスト教の影響

北欧神話が記録された13世紀は、すでに北欧諸国がキリスト教化された後の時代でした。そのため、記録された神話にはキリスト教的な解釈が加えられた可能性があります。

 

北欧神話の近代への影響

北欧神話は、後の文学や映画、ゲームに大きな影響を与えました。特に、以下のような作品でその要素が取り入れられています。

 

北欧神話の影響
  • J.R.R.トールキン「指輪物語」:エルフやドワーフなどの設定は北欧神話に由来。
  • マーベル・コミック「マイティ・ソー」:トールやロキが登場し、現代的にアレンジされている。
  • ゲーム「ゴッド・オブ・ウォー」「アサシンクリード ヴァルハラ」:北欧神話を題材にした作品。

 

このように、北欧神話は「作者不詳」の神話でありながら、今日の文化にも深く根付いています。

 

まとめ

北欧神話には明確な「作者」は存在せず、古代北欧の人々によって口承伝承として伝えられてきました。しかし、13世紀にスノッリ・ストゥルルソンらが「エッダ」を記録したことで、現在の形で北欧神話が残ることになりました。

 

この神話は、キリスト教化の影響を受けつつも、後の文学や映画、ゲームに多大な影響を与え、現代でも愛され続けています。