


黄金の猪グリンブルスティに乗るフレイの挿絵
豊穣と平和を司る神。
人々に繁栄をもたらす象徴として穏やかかつ寛容な性格として描かれる。
出典:『Freyr riding Gullinbursti』-Photo by Ludwig Pietsch/Wikimedia Commons Public domain
豊穣・平和・太陽の光──これらを象徴する神、それがヴァン神族の一員フレイです。
トールやオーディンのように剣や雷を振りかざす神とはちがい、フレイは土地に実りをもたらし、人々の暮らしをあたたかく支える存在として、北欧神話の中で特別な位置を占めています。
そんな彼の性格は、力を誇るのではなく“ゆるやかに包みこむ”ような強さに満ちています。
そして神話では、フレイが人間の女性に心を奪われ、武器を手放してまで愛を選んだというロマンチックな逸話や、彼に付き従う黄金の猪グリンブルスティとの信頼関係も印象的に語られます。
本節ではこの「フレイの性格」というテーマを、争いを好まぬ穏やかな性格・自然と調和するおおらかな性格・仲間と共に歩む寛大な性格──という3つの視点から、ざっくり楽しく紐解いていきたいと思います!
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フレイは、ヴァン神族の代表的な神でありながら、戦いをほとんど好まないことで知られています。
彼が力をふるうときでさえ、それは誰かを傷つけるためではなく、大切なものを守るためなのです。
アース神族との争いのあと、和平の象徴としてアースガルズに迎えられたフレイは、たちまち信頼される存在となりました。
その理由こそ、彼が決して怒りに任せて動くような神ではなかったからです。
あるときフレイは、ヨトゥン族の女性ゲルズに一目惚れします。
彼女を得るためには、持っていた魔法の剣を手放さなければならないという条件がありましたが、フレイはそれを受け入れます。
つまり、「武器よりも愛を選ぶ」──この選択には、平和を望むフレイの穏やかで柔らかい心がにじんでいますよね。
フレイのもう一つの大きな特徴が、自然との深い結びつきです。
彼は太陽の光を司り、農耕や雨、実りをもたらす神とされ、常に自然と調和した存在として描かれています。
その象徴が、黄金の猪グリンブルスティ。この猪は、ドワーフによって鍛えられた魔法の生き物で、フレイのそばに常に従っています。
グリンブルスティは、ただの乗り物や使い魔ではありません。
フレイとこの猪の関係は、信頼と共存に根ざした「友だちのような関係」なんです。
夜でも金色の毛が輝き、どんな土地でも走れるこの猪と共に旅するフレイは、自然そのものとともに生きる存在。 怒らず、急かさず、ただ季節の流れに寄り添うような…そんなおおらかさが、彼の性格から感じ取れます。
最後に見ておきたいのが、フレイの寛大さです。
北欧神話に登場する神々の多くは、力や威厳で人々を従わせるタイプが多い中、フレイは支配ではなく共存を選ぶ神でした。
彼は、人間界ミズガルズにおいても信仰され、「豊穣をもたらす神」として畑や収穫と深く結びついています。
フレイは、人々に作物や天候の恵みを与えながら、その見返りを求めることがほとんどありません。
「与えっぱなし」とも言えるこの姿勢は、まさに寛大で惜しみない心の持ち主である証拠。
そして彼の物語には、仲間との衝突や嫉妬のような感情が描かれることが少なく、神々の中でもひときわ“穏やかで懐の深い”存在として際立っているのです。
というわけで本節では、太陽と豊穣をつかさどる神フレイの性格について掘り下げてみました。
穏やかに平和を選び、自然と共に生きるおおらかさを持ち、寛大に人々に恵みをもたらす──そんなフレイの性格は、静かでありながらどこまでも力強く、見る人の心を和ませる魅力にあふれています。
グリンブルスティと共に歩むその姿は、まるで「自然の王」とも呼びたくなるほど。
力で征服するのではなく、共に生きて育てていく──そんな神の在り方に、今の私たちもきっと惹かれるのだと思います。
🌾オーディンの格言🌾
フレイよ、おぬしの道は剣ではなく、陽の光と実りの雨に貫かれておったな。
争わぬことは、弱さにあらず──育み、譲り、信じる強さなのじゃ。
勝利の剣を手放しても、愛と平和のために歩む決意──それが真の勇気というものよ。
アルフヘイムを治めしその姿は、神にして民の友。
わしらが忘れてはならぬのは、荒れ野を切り拓く斧の力だけではない。
種を蒔く者の手こそが、次の時代を育むのじゃ。
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