


アースガルズに連れ戻されるイズンの挿絵
若返りの林檎を司る女神イズンが、
アース神族の居城アースガルズへ帰還する場面を描いた19世紀の挿絵。
出典: 『Idun Brought Back to Asgard』-Photo by Lorenz Frolich/Wikimedia Commons Public domain
「アースガルズ」って、北欧神話ではとっても重要な場所なんですよね。
オーディンやトールをはじめとした神さまたちが暮らす壮麗な都であり、神話の中では戦いや宴、知恵や運命にまつわる数々の出来事がここから始まります。
でもふと考えてみると、「アースガルズってどこにあるの?」という素朴な疑問が湧いてきませんか?
空の上?別の世界?それとも地上のどこか?
というわけで、本節では「アースガルズの場所」をめぐって、神々の都の構造・人間界とのつながり・神話的な空間の解釈という3つのポイントから、わかりやすく見ていきましょう!
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アースガルズは、北欧神話に登場するアース神族の本拠地。オーディンやフリッグ、トール、バルドルといった神々がここに住んでいて、まるで王国のように栄えた場所です。
この都には、壮麗な宮殿「ヴァルハラ」や、運命の女神ノルンたちが住む「ウルズの泉」など、さまざまな神話の名場面が登場する場所があります。
神々の会議の場「イードゥラヴィッル」では、世界の運命について議論されたり、神々の祝宴が開かれたりしていたんですね。
古い文献では、アースガルズは空の上にある世界だとされており、世界樹ユグドラシルの高い枝のあたりに位置づけられることが多いです。
つまり、アースガルズは「天界」的なイメージを持つ場所として、神々の秩序と力の象徴になっているんですね。
そして、その高みから世界を見渡し、神々は宇宙全体のバランスを保とうとしていたのです。
神々の世界と人間界って、まったく別物に見えるかもしれませんが、実はちゃんと橋でつながっているんです。
それが、虹の橋ビフレスト。
この橋は、アースガルズとミズガルズ(人間の世界)を結ぶルートで、神々が行き来するための重要な通路でした。とくに、トールが地上に降りて巨人と戦うときなど、この橋を渡って出発する描写が多く見られます。
ビフレストは虹そのものの姿をしており、色とりどりの光が交差する神秘的な存在。神話では、ラグナロクの際にこの橋が巨人たちに壊されるとも言われていて、それほど宇宙のバランスを保つ要の役割を果たしているんです。
アースガルズは遠い存在ではあるけれど、ビフレストを通じて人間界とつながっているというのが、また面白いところですよね。
この橋があるおかげで、神々と人間はまったく無関係ではなかったんです。
アースガルズの正確な「場所」については、時代や文献によってさまざまな解釈があります。
詩のエッダや散文のエッダなど、古いアイスランドの文献では、アースガルズは明確に世界樹ユグドラシルの上層部に位置しているとされていました。
けれども、現代になると、「アースガルズは物理的な場所ではなく、精神的・象徴的な空間なのでは?」と考える人もいるんです。
神々の世界とは、秩序や理性、知恵や調和を象徴するもの。だから、アースガルズを「天の高み」に置くことは、「理想」や「高次の存在」へのあこがれの表れともいえるかもしれません。
このように、アースガルズの場所は単なる地理的な意味だけでなく、北欧神話の宇宙観そのものを映し出す鏡のような存在でもあるのです。
そう考えると、私たちが空を見上げるとき、そこにアースガルズの気配を感じることができるかもしれませんね。
🏰オーディンの格言🏰
アースガルズは、ただの「場所」ではない──それは、わしらが築いた「理(ことわり)」の象徴にして、天空に浮かぶ“心の城塞”じゃ。
世界樹の高枝に根ざし、ビフレストを通じて人間界ともつながるこの地は、神々の意志と知恵が交差するところ。
アースガルズとは、「高みに在る理想」であり「人と神とを隔てぬ橋」でもあるのじゃ。
イズンが帰還するたび、ヴァルハラには若き命が満ち、宴の火が灯る。
わしらの血脈がここを守る限り、この世界の秩序は保たれよう。
だが忘れるでない──天にあるがゆえに、終末には最も激しく揺らぐのもまたアースガルズなのじゃ。
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