


ノルウェーのヨトゥンハイメン山地
ノルウェー南部の高山地帯で、地名は北欧神話の巨人の国ヨトゥンヘイムに由来。
出典:『Jotunheimen mountains』-Photo by Pudelek (Marcin Szala)/Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0
神話って、全部が空想の世界にあると思っていませんか?
でも実は、オーディンやトールといった神さまたちの名前を冠した場所が、今も北欧のあちこちに残っているんです。
たとえばウプサラの大神殿や、ノルウェーの小さな村トルスフィヨルド、さらには日常的に使われる地名の中にも、神々の記憶がちゃんと息づいているんですよ。
というわけで、本節では北欧神話の「実在する場所」というテーマで、アースの名を冠する地・トールの名を宿す村・神々の記憶を刻む大地・巨人たちが棲む世界──この4つの視点から、神話と現実がつながる場所をたどってみたいと思います!
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北欧神話を語るうえで絶対に外せないのがウプサラです。
今でこそスウェーデンの落ち着いた大学都市として知られていますが、昔は神々の信仰の中心地だったんですよ。
特に注目すべきなのは、「ガムラ・ウプサラ(古代ウプサラ)」と呼ばれるエリア。
ここにはかつて、オーディン・トール・フレイなどの神々を祀る巨大な神殿があったと伝えられています。
ガムラ・ウプサラには今でも巨大な3つの墳丘墓が残っていて、「これが神々の墓だ」と信じられていた時代もありました。
実際には王族や貴族の墓と考えられていますが、それでもその大きさと神聖な雰囲気は、古代の人々がどれだけこの場所を特別視していたかを物語っています。
この地はオーディンたち“アース神族”の名を冠する地として、今も信仰の記憶を静かに伝え続けているんですね。
神話の雷神トールにちなんだ地名も、実際に存在しています。
その代表がノルウェー北部にある「トルスフィヨルド(Torsfjord)」という村。
トルス(Tors)はトールのことで、フィヨルドは「湾」や「入り江」を意味する言葉なので、直訳すると「トールの湾」になるんです。
なんだか、トールが船に乗って戻ってくるようなイメージが湧いてきませんか?
この村の名前からもわかる通り、かつてこの地域の人々が、トールという神をとても大切にしていたことが読み取れます。
トールは嵐を司る神であり、人々の暮らしを守る守護者でもありました。
だからこそ、自然の力を直接受ける湾や港にその名がつけられるのは、すごく意味深いことだったんですね。
北欧神話の神々の名は、特別な神殿や村の名前だけじゃなく、もっと日常の地名にもたくさん残っているんです。
たとえばスウェーデンには「トルスビー(Torsby)」や「オーデンスヴィー(Odensvi)」など、神々の名前がくっついた町や村があちこちにあります。
こういう名前を見つけると、「あ、ここにも神話の記憶があるんだ!」って嬉しくなりますね。
たとえばOdensviという地名は、「オーディンの神域」という意味があります。
つまり、神殿や祭壇があった場所だった可能性が高いんです。
他にも「フレイの丘(Freysberg)」のような名前も残っていて、こうした地名ひとつひとつが、古代北欧の人々の信仰の深さを今に伝えているんです。
神話はただの物語ではなく、土地に根ざした人々の暮らしと結びついていたんだなって、こういう話を知ると強く感じます。
「巨人の国」って、本の中の空想だけだと思っていませんか?
でも実はノルウェーの山奥に、まさにその名前を冠した場所が存在しているんです。
それがヨトゥンハイメン(Jotunheimen)──名前の意味はズバリ「巨人たちの故郷」。
これは北欧神話に登場するヨトゥン族(Jötnar)、つまりアース神族と対立したり交流したりする巨人たちの住処「ヨトゥンヘイム(Jötunheimr)」と同じ語源なんですよ。
ヨトゥンハイメンには、ノルウェー最高峰のガルフピッゲンをはじめとする、まるで神話の世界からそのまま抜け出してきたような険しい山々が連なっています。
深い谷、鋭くそびえる峰、広がる氷河……その風景は、まさに人ならざる存在が棲んでいそうな「異界」そのもの。
古代の人々が、ここを「巨人たちの国」だと考えたのも納得の迫力です。
北欧神話では、オーディンたちが住むアースガルズと、巨人たちが住むヨトゥンヘイムは世界樹ユグドラシルを挟んで別々の世界にありました。
でも、時には神々がヨトゥンの地を訪れたり、逆に巨人たちがアースガルズにやってきたりと、互いの世界は完全に断たれていたわけではありません。
ヨトゥンハイメンのような山深い場所は、そんな「神話の境界」にふさわしい場所なのかもしれませんね。 山の向こうには、もしかしたら本当に巨人たちの世界が広がっているのかも……?
⛰オーディンの格言⛰
わしらの血脈は、ただ物語の中にのみ息づいておるのではない。
谷に名を残し、丘に記憶を刻み、村に祈りを宿して──今も風とともに在るのじゃ。
「神話の地」とは、遥かなる世界樹の枝葉が、この現世に触れた証なのじゃ。
トールの名を戴く湾、わしの名を冠する聖地、そして巨人の山並みヨトゥンハイメン……
それらは皆、「あの時代」の余韻を映す鏡のごとし。
人々が祈り、畏れ、語り継いだこと──その全てが、大地に溶け込んでおる。
目に見えるものと見えぬものの境を歩む者こそ、「真の継ぎ手」となろう。
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