北欧神話の「夢魔」といえば?

北欧神話には、夢の中に現れて人々を惑わせたり、未来を示唆する存在が登場します。ギリシャ神話のオネイロスや、中世ヨーロッパで語られるナイトメア(悪夢の精霊)に相当する存在として、北欧神話には「夢魔」と呼ばれるものがいくつか存在していました。

 

本記事では、北欧神話における夢と夢魔の概念、夢に関わる神々や魔物について詳しく解説していきます。

 

 

北欧神話における「夢魔」の概念

北欧神話では、夢は単なる幻想ではなく、神々や運命と深く結びついたものと考えられていました。夢を通じて未来を予見することができる一方で、悪夢を送り込む存在もいたのです。

 

夢と予知能力

北欧神話では、夢には神々からの警告死の予兆が込められていると考えられていました。特に、神々や英雄が夢を通じて未来を知るエピソードが多く存在します。

 

北欧神話における夢の役割
  • 予知の手段:夢を通じて未来を知ることができる。
  • 神々のメッセージ:夢は神々からの警告や導きであることがある。
  • 悪夢による呪い:夢魔が悪夢を送り込むことで、不安や恐怖を与える。

 

北欧神話に登場する「夢魔」

 

北欧神話には、人間や神々に夢を見せる存在が登場します。その中でも特に重要なのがマーラ(Mara)ヴォルヴァの夢の力です。

 

マーラ—北欧のナイトメア

マーラ(Mara)は、北欧神話やゲルマン伝承に登場する悪夢をもたらす魔物です。英語の「Nightmare(悪夢)」の語源にもなった存在とされています。

 

マーラの特徴
  • 眠っている人にまたがる:マーラは夜、人々の胸に乗り、不快な悪夢を見せる。
  • 動けなくする力:夢の中で身動きが取れなくなる「金縛り」の原因とされる。
  • 馬に悪夢を与える:家畜の馬にも影響を及ぼし、恐怖に震えさせる。
  • 霧のように現れる:物理的な形を持たず、霧や影のように出現する。

 

マーラの伝承は、後のヨーロッパの魔女伝説や吸血鬼伝説にも影響を与えたと考えられています。

 

ヴォルヴァ—予知夢を操るシャーマン

ヴォルヴァ(Völva)は、北欧神話に登場する巫女やシャーマン的存在で、予知夢を操る力を持っていました。

 

ヴォルヴァと夢の関係
  • 夢を通じて未来を見る:ヴォルヴァは夢の中で神々の啓示を受ける。
  • 他人に夢を送り込む:夢を操り、他者にメッセージを届ける力を持つ。
  • ラグナロクの予言者:『詩のエッダ』の「巫女の予言(ヴォルスパー)」では、ヴォルヴァが未来の出来事を夢として見ている。

 

ヴォルヴァの夢の力は、単なる幻想ではなく、運命を読み解く手段として重要視されていました。

 

北欧神話における夢魔の象徴的な意味

北欧神話の夢魔や夢の概念には、以下のような象徴的な意味が込められています。

 

未来の予兆

夢はしばしば、神々や人間にとって未来の出来事を示唆する重要なメッセージとされます。特に、ラグナロクに関する夢は、神話の中で何度も語られます。

 

恐怖と不安の象徴

マーラのような存在は、人間の無意識の恐れや不安を象徴しています。悪夢は単なる現象ではなく、精神的な脅威と結びついていました。

 

運命の操作

ヴォルヴァの夢の力は、夢が運命を決定づける手段であることを示しています。これは、北欧神話における「運命(ウルドル)」の概念とも関連しています。

 

まとめ

北欧神話における「夢魔」の概念は、悪夢をもたらすマーラや、予知夢を操るヴォルヴァといった存在によって語られています。

 

  • マーラ: 眠る者の上に乗り、悪夢を見せる精霊。
  • ヴォルヴァ: 夢を通じて未来を予言する巫女。
  • 夢は未来の予兆: 夢を通じて神々のメッセージや運命が示される。

 

このように、北欧神話における夢は単なる幻想ではなく、運命や神々の意志と深く結びついた重要な現象だったのです。