


ドワーフの鍛冶工房の挿絵
テーブルにグリンブルスティ、スキーズブラズニル、グングニル、シヴの黄金の髪と共に、
腕輪「ドラウプニル」が置かれている。
出典:『The third gift - an enormous hammer』-Photo by Elmer Boyd Smith/Wikimedia Commons Public domain
オーディンが持っていた不思議な腕輪、ドラウプニル。それは、9夜ごとに同じ腕輪が8つも増えてしまうという、ちょっと信じられないような魔法のアイテムなんです。しかも、ロキやドワーフたちが登場する有名な“宝物対決”の中でも、この腕輪はかなり重要な存在として描かれています。
実はこの腕輪、単なる金のアクセサリーじゃなくて、神々の世界の「富」や「力」、そして「つながり」を象徴する特別な意味が込められていたんです。
本節ではこの「ドラウプニル」という神器を、腕輪の持ち主・作り手のドワーフたち・そして能力とその後の伝説──という3つの視点に分けて、ざっくり楽しく紐解いていきたいと思います!
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まず、この不思議な腕輪・ドラウプニルの持ち主は、北欧神話の中で最高神とされるオーディンです。彼は知恵と戦いの神であり、神々の世界アースガルズの主。そんなオーディンが身に着けていたということからも、この腕輪の特別さがよくわかりますよね。
ドラウプニルの登場は、ロキがいたずらのせいで大ピンチに陥ったあと、名匠ドワーフたちによって生まれた“三つの宝”のひとつとして紹介されます。その中でもドラウプニルは、ただの金の輪ではなく、9夜ごとにまったく同じ腕輪が8つ生まれるという、すごい力を持っていました。
この増える力、何を意味しているのでしょうか?それは、富が尽きることなく広がっていくという繁栄の象徴かもしれません。神々の王であるオーディンが持つには、ぴったりの象徴なんです。
また、ドラウプニルは死後の世界でも登場します。オーディンは死んだ自分の息子・バルドルの葬儀の際に、この腕輪を彼の亡骸とともに送り出しました。つまり、オーディンにとってこの腕輪は、「富」や「力」だけでなく、愛情や祈りのこもった大切な品でもあったのです。
この驚きのアイテムを作ったのは、北欧神話の中でも特にすご腕のドワーフ兄弟、ブロックとシンドリです。もともとは、ロキがやらかした“いたずら”がきっかけで、この兄弟が作り出すことになったんですよ。
というのも、ロキが他のドワーフに「もっとすごい宝を作れる奴がいるよ」と勝手に話してしまったんですね。その言葉を信じた神々は、実際に“宝の対決”を行うことになりました。そしてこの対決の中で、ブロック兄弟がオーディンのために作ったのが、ドラウプニルだったというわけです。
この腕輪、ただの金細工ではなく、ドワーフたちが持つ魔法の炉と道具を使って緻密につくり上げられました。1つの腕輪が9夜ごとに8つ増えるなんて、まるで命が宿っているみたいですよね。
ブロックたちは、ドラウプニル以外にも、トールのハンマー「ミョルニル」やフレイの猪「グリンブルスティ」なども作り出しています。つまり、彼らはまさに“神々の道具を作る職人”として、北欧神話に欠かせない存在なんです。
ドラウプニルの一番の特徴は、もちろん9夜ごとに同じ腕輪が8つ生まれるという能力です。でも、これってどういう意味を持つんでしょうか?
ただ「金が増える」って話じゃないんです。北欧の世界観では、富や物は「分け合う」ことで価値が高まるとされていました。だから、増えたドラウプニルはオーディンが他の神々や人間に贈ることで、神の恵みを分け与える象徴になっていたんですね。
さきほど少し触れましたが、バルドル(オーディンの息子)が亡くなったとき、オーディンはこの腕輪を彼と一緒に火葬の船に乗せました。
それだけでなく、あとになって、死者の国ヘルヘイムを訪れた使者が、なんとバルドルから再びドラウプニルを持ち帰ってきたという話もあるんです。これはつまり、死後の世界と現世をつなぐ“神聖な絆”として、ドラウプニルが特別な役目を果たしていたということ。
こんなふうに、ただのアイテムじゃなくて、「与えること」「思い出すこと」「つながること」──そんな意味がたっぷり詰まった腕輪、それがドラウプニルだったんです。
というわけで、ドラウプニルは金の腕輪でありながら、それ以上の価値を持つ存在でした。神々の王・オーディンが持ち、名工ドワーフたちが鍛え上げたこの腕輪は、「無限に富が生まれる」という奇跡のような力を持っていたんです。
でも、それ以上に大切なのは、その腕輪に込められた「分け合う」「思い出す」「祈る」気持ち。神話の中のドラウプニルは、そうした人間らしい想いを、私たちに語りかけてくれているのかもしれませんね。
💍オーディンの格言💍
黄金の腕輪とは──見た目の価値では量れぬ「祈り」の器よ。
ドラウプニルは、わしが息子バルドルへ託した「想いのかたち」じゃ。
九夜ごとに生まれる腕輪の分身は、豊かさと再生の象徴にして、時をめぐる輪の刻印。
それは終わらぬ流れのように、この九つの世界を静かに潤し続けておる。
神々の遺品は、ただの宝などではない──それぞれが「魂の継承」なのじゃ。
ドラウプニルを手に取る者よ、そこに込められた父子の絆と循環の理を読み解いてみよ。
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