北欧神話の「月を追いかける狼」とは

北欧神話には、巨大な狼が登場する印象的な伝説がいくつかあります。その中でも特に興味深いのが、「月を追いかける狼」に関する神話です。

 

北欧神話では、太陽と月は狼たちに追われ続けていると考えられていました。特に、「ハティ・フロズヴィトニル」という狼が、夜空を走る月を追いかける存在として知られています。彼は、昼の太陽を追う狼「スコル」と対になる存在であり、終末の日であるラグナロクには、彼らが太陽と月を飲み込んでしまうとされています。

 

本記事では、北欧神話における「月を追いかける狼」であるハティ・フロズヴィトニルについて、その役割や神話的な意味、ラグナロクにおける役割を詳しく解説していきます。

 

 

ハティ・フロズヴィトニルとは?

ハティ・フロズヴィトニルは、北欧神話に登場する狼であり、月を追いかける運命を持つ存在です。

 

名前の意味

ハティ(Hati)は、古ノルド語で「憎しみ」や「敵意」を意味します。そして、「フロズヴィトニル」(Hróðvitnir)は、しばしば「有名な狼」や「強力な狼」を指す言葉として使われます。このことから、彼は憎しみを抱き、恐るべき存在として夜空を駆ける狼だと考えられています。

 

スコルとの関係

ハティには対となる存在がいます。それが「スコル」という狼です。

 

ハティとスコルの関係
  • ハティ:夜空の月を追いかける狼。
  • スコル:昼の太陽を追いかける狼。
  • ラグナロクの役割:終末の日に、スコルは太陽を、ハティは月を飲み込むとされる。

 

このように、ハティはスコルと対になる存在として、北欧神話の宇宙観の一部を構成しているのです。

 

ハティが追う月と北欧神話の宇宙観

北欧神話において、太陽や月は単なる天体ではなく、それぞれに神話的な存在が宿っています。

 

マーニ—月の神

ハティが追いかけるのは、単なる月ではなく、「マーニ(Máni)」という神です。

 

マーニ(月の神)とは?
  • 夜空を駆ける月の神:マーニは月を司る神であり、夜の空を旅する。
  • ハティに追われる存在:ハティはマーニを追いかけ、最終的には彼を捕らえるとされる。
  • 人間の子供を連れている:マーニは「ビル」と「ヒュド」という子供を月の馬車に乗せているという伝説がある。

 

このように、月の神マーニは常にハティに追われる運命にあり、これは北欧神話の夜空のサイクルを象徴しています。

 

ラグナロク—終末の日に訪れる運命

ハティとスコルは、ただ追いかけ続けるだけではなく、ラグナロク(終末の日)において、重大な役割を果たします。

 

月と太陽の消滅

北欧神話では、ラグナロクが訪れると、ハティとスコルがそれぞれ月と太陽を飲み込むとされています。

 

ラグナロクにおける狼の役割
  • スコルが太陽を飲み込む:昼の世界が暗闇に包まれる。
  • ハティが月を飲み込む:夜の光が完全に消え去る。
  • 世界の終焉:太陽と月が消え、世界は混沌へと向かう。

 

これによって、北欧神話の世界は闇に包まれ、ラグナロクの戦いが本格化していくのです。

 

まとめ

北欧神話における「月を追いかける狼」とは、ハティ・フロズヴィトニルのことを指します。彼は、昼の太陽を追いかける狼スコルと対になる存在であり、夜空の月を追い続ける運命を持つ狼です。

 

また、彼が追いかけるのは、単なる月ではなく月の神マーニであり、この神話は北欧の宇宙観における昼夜のサイクルを象徴しています。

 

最終的に、ハティとスコルはラグナロクにおいて月と太陽を飲み込み、世界の終焉を引き起こすとされます。この神話は、北欧世界の運命と時間の流れを表しており、単なる天体の運行を超えた壮大な物語なのです。