北欧神話において、「第一世界」とされるのは、宇宙が誕生する前に存在した世界であり、特にギンヌンガガプ(Ginnungagap)がその象徴とされています。ギンヌンガガプは、北欧神話の宇宙論における「原初の混沌」のことを指し、そこからすべての世界が生まれました。
本記事では、北欧神話の「第一世界」とされるギンヌンガガプと、そこから生まれた世界について詳しく解説します。
北欧神話における「第一世界」とは?
北欧神話の宇宙の始まりは、何も存在しない空間「ギンヌンガガプ」から始まります。その後、この空間の中でムスペルヘイム(Muspelheim、炎の国)とニヴルヘイム(Niflheim、氷の国)という二つの世界が生まれ、そこからすべてが誕生しました。
北欧神話における「第一世界」の要素
- ギンヌンガガプ(Ginnungagap):宇宙が生まれる前の混沌。
- ムスペルヘイム(Muspelheim):炎の世界、熱と光を持つ。
- ニヴルヘイム(Niflheim):氷と霧の世界、冷気と闇を持つ。
- ユミル(Ymir):ギンヌンガガプから生まれた最初の巨人。
- アウズフンミル(Auðhumla):宇宙創造の過程で現れた原初の牛。
ギンヌンガガプ:北欧神話の「第一世界」
ギンヌンガガプとは?
ギンヌンガガプ(Ginnungagap)は、宇宙が形成される前に存在した原初の混沌です。この空間には何もなく、無限に広がる虚無であったとされています。
ギンヌンガガプの特徴
- すべてが始まる前に存在した無の空間。
- 北側に氷の世界(ニヴルヘイム)、南側に炎の世界(ムスペルヘイム)が現れる。
- 氷と炎がぶつかることで最初の生命(ユミル)が誕生。
ギンヌンガガプから世界が生まれる
ギンヌンガガプの中で、「氷の世界(ニヴルヘイム)」と「炎の世界(ムスペルヘイム)」が接触し、氷が溶けて滴となり、そこからユミル(Ymir)という最初の巨人が生まれました。
世界創造の流れ
- ギンヌンガガプにニヴルヘイム(氷の世界)とムスペルヘイム(炎の世界)が現れる。
- 二つの世界がぶつかり、氷が溶けてユミル(最初の巨人)が誕生。
- 同時に、アウズフンミル(原初の牛)が生まれる。
- ユミルの体から、他の巨人や神々が生まれていく。
ニヴルヘイムとムスペルヘイム:第一世界を形作る二つの領域
ニヴルヘイム(Niflheim):氷と霧の世界
ニヴルヘイムは、ギンヌンガガプの北側に形成された、氷と霧の世界です。
ニヴルヘイムの特徴
- 極寒の氷と闇が広がる世界。
- 世界の根源の泉フヴェルゲルミル(Hvergelmir)がある。
- ニヴルヘイムの冷気がギンヌンガガプに広がり、宇宙創造の鍵となる。
ムスペルヘイム(Muspelheim):炎の世界
ムスペルヘイムは、ギンヌンガガプの南側に形成された、炎と熱の世界です。
ムスペルヘイムの特徴
- 火と熱に包まれた世界で、強大な熱エネルギーを持つ。
- 炎の巨人たちが住み、彼らの王はスルト(Surt)。
- ラグナロク(終末)では、スルトが炎で世界を焼き尽くす。
第一世界から現在の世界(ミッドガルド)への変遷
ギンヌンガガプから生まれたユミルは、やがて神々(オーディン、ヴィリ、ヴェー)によって殺され、彼の体を材料として世界が作られました。
世界創造の過程
- ユミルの肉 → 大地になる。
- ユミルの血 → 海や川になる。
- ユミルの骨 → 山々になる。
- ユミルの髪 → 森や草木になる。
- ユミルの頭蓋骨 → 天空になる。
- ユミルの脳 → 雲になる。
このようにして、現在の世界であるミッドガルド(Midgard)が誕生しました。
第一世界の神話が現代に与えた影響
北欧神話の宇宙創造神話は、現代のファンタジーや文学にも影響を与えています。
ファンタジー作品での登場
- 『ロード・オブ・ザ・リング』:世界の創造神話に北欧神話の影響が見られる。
- 『ゴッド・オブ・ウォー』:ギンヌンガガプやムスペルヘイムが登場する。
- 『マイティ・ソー』:北欧神話の世界観が基盤になっている。
北欧神話における「第一世界」とは、ギンヌンガガプ(原初の混沌)のことを指し、そこからニヴルヘイム(氷の世界)とムスペルヘイム(炎の世界)が生まれました。そして、最初の巨人ユミルの体から、現在の世界が形成されたのです。この神話は、北欧の厳しい自然と宇宙観を反映した壮大な物語ですね。