


北欧神話で夜を司る女神ノート
星々は闇を飾る光として語られ、夜の運行とともに世界を包むとされる。
出典:『The Night (Natten)』-Photo by Peter Nicolai Arbo/Wikimedia Commons Public domain
星空を見上げたとき、きれいだなぁ…と感じると同時に、「この星たちって、神話と何か関係あるのかな?」なんて考えたこと、ありませんか?
北欧神話の中で、「星」そのものを直接つかさどる神は多くありません。でも、“夜空を運ぶ女神”や“時間を測る存在”など、星や空に深く関わる神々がいるんです。星を司るのは、必ずしも光り輝く者たちだけとは限りません。
本節ではこの「北欧神話の星の神」というテーマを、夜の女神ノート・月の神マーニ・運命の女神ウルズ──という3柱のキャラクターを通して、ざっくり楽しく紐解いていきたいと思います!
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まず最初に紹介したいのが、ノート(Nótt)という女神です。
彼女の名前は、ずばり「夜」を意味します。そして、彼女は黒く濃い馬に乗り、夜の空を駆ける女神。この馬のたてがみには、星々がキラキラと光っているとされているんです。
つまり、ノートが空を移動することで、夜が訪れ、星が輝く──そんなイメージが古代の人々にはあったんですね。
ノートは不思議な経歴の持ち主で、三度の結婚をしています。
最初の夫との間にはアウズという子が、次の夫との間にはヨルズ(大地の女神)が、最後の夫デリングとの間にはダグが生まれました。
このように、ノートは夜をもたらす存在であると同時に、空の光──月や星、太陽さえも生み出す存在として描かれているんです。
星は、そんなノートが連れてくる「夜の贈りもの」だったのかもしれません。
次にご紹介するのは、マーニ(Máni)という神。
彼はノートとデリングの子、つまり夜と朝のあいだから生まれた存在です。そしてその役割は明確で、空をかける「月」を運ぶ神なんです。
マーニは、太陽を運ぶ妹ソールとともに、空を東から西へと移動する定めを持っています。北欧神話では、月や太陽は単なる天体ではなく、神々が車に乗って実際に動かしていると考えられていたんですね。
星と月はいつもセットで夜空に輝いていますよね。マーニが運ぶ月は、夜の時間を測る手がかりとして、古代の人々にとってとても大切な存在でした。
また、星の動きとともに、月の満ち欠けも農作業や儀式のタイミングを知る手段だったのです。
マーニの後ろを走るのは、月を食らおうとする狼ハティ。そのため、時折起こる月食も、「狼が月を追いつめた時」と説明されていました。
つまり、星のきらめきのそばには、いつもマーニの静かな光が寄り添っていたということなんです。
最後に紹介するのは、ちょっと意外かもしれませんが、ウルズ(Urðr)という運命の女神です。
彼女は「ノルン(運命の三女神)」のひとりで、過去を司る存在。ほかの2人は現在のヴェルザンディ、未来のスクルドと呼ばれます。
いったい彼女がどうして星の神と関係するのか?──それは、星が「時間」と密接に結びついた存在だからです。
夜空に輝く星たちは、天の運行の記録でもあります。古代の人々は星を観察し、その位置や動きから季節の移り変わりや吉兆を読み取りました。
つまり、星空は「天に刻まれた運命の暦」とも言えるんですね。そうした中で、運命を紡ぐノルンたちは、星の背後にある「時間の糸」を操る存在と考えることができるのです。
ウルズはユグドラシルの根元にある「ウルズの泉」を守っており、その泉の水は神々に知恵を与えるものでもあります。
星と運命、時間と神々の知恵──そのすべてが、ウルズを通じてつながってくるというわけです。
というわけで、本節では北欧神話の「星の神」というテーマで、ノート・マーニ・ウルズという3柱のキャラクターをご紹介しました。
夜をもたらすノートは、星々のきらめきそのものを運ぶ存在。月を動かすマーニは、星とともに夜空を飾る静かな光。そしてウルズは、星が記す「時間と運命」を読み解く女神。
それぞれが異なるかたちで、星と結びついた「夜の知恵」や「宇宙の秩序」を体現しているのです。
星を見上げるとき、そこに彼らの姿が浮かんでくるような気がしてきませんか?
🌌オーディンの格言🌌
夜の帳が下りるとき、空を駆けるのはノートの馬車──そのたてがみのしずくが、露となって草を潤す。
星々は彼女の衣に縫い込まれた「沈黙の灯」じゃ。
闇とは終わりではなく、神々が静かに語りかけてくる時間なのじゃ。
ソールとマーニが空を巡り、狼に追われるごとに、世界は時を刻む。
わしもまた夜空を見上げ、未来の兆しを読み取ったものよ。
空に輝くすべての光には、語られぬ物語が秘められておる──そなたの夢の中にも、きっとな。
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