
北欧神話において月は、神々が創り出した天体のひとつであり、世界の秩序を象徴する存在です。
夜空に浮かぶ月は単なる光の源ではなく、時間の流れや運命と深く結びついていました。
また、月を司る神が狼に追われるという伝説もあり、その運命は北欧神話の終末「ラグナロク」とも関連しています。
本記事では、北欧神話における月の役割や象徴的な意味について詳しく解説します。
北欧神話では、月は神聖な存在であり、単なる夜空の光ではなく、特定の神が司るものとされていました。
マーニ(Máni)は、北欧神話における月の神です。
彼は太陽の女神ソール(Sól)の兄弟であり、天空を旅する運命にあります。
マーニは昼と夜の境界をつかさどり、夜を支配する存在として語られています。
マーニはビル(Bil)とヒューキ(Hjúki)という二人の子供を連れて夜空を旅します。
この伝承は、月の満ち欠けに関係すると考えられています。
北欧神話では、世界の創造とともに月が生まれ、その役割が決められました。
北欧神話の天地創造では、神々はユミルという巨人を倒し、その体から世界を作りました。
このとき、神々は火の国ムスペルヘイムの炎を用いて太陽と月を創り、世界に光をもたらしました。
マーニが夜空を旅することにより、時間の流れが定められ、暦が生まれました。
北欧神話において、月は時間の概念と密接に結びついているのです。
北欧神話では、太陽と月は常に狼に追われる存在として描かれています。
これは世界の終末「ラグナロク」にも関係しています。
マーニの月の戦車を追いかけるのは、狼のハティ(Hati)です。
彼は太陽を追う狼スコル(Sköll)の兄弟であり、マーニを捕らえる運命にあります。
終末の日「ラグナロク」では、ハティがついにマーニを捕らえ、月は飲み込まれてしまいます。
これにより世界は混沌に陥り、神々と巨人の最終決戦が始まるのです。
北欧の人々にとって、月は神話の中だけでなく、日常の信仰や暦にも影響を与えていました。
北欧の農耕民たちは、月の満ち欠けを重要な指標としていました。
月の変化は、人々の生活リズムを決める重要な要素だったのです。
北欧の戦士たちは、満月の夜に戦を仕掛けることが多かったとされています。
これは、月が夜を明るく照らし、視界が確保されるためとも言われています。
また、満月は神々の加護を受けやすい時期とも考えられていました。
北欧神話における月は、夜空に輝く単なる天体ではなく、時間の流れや宇宙の秩序をつかさどる神聖な存在でした。
マーニという神によって導かれ、その運行は狼ハティとの壮絶な追走劇となっています。
また、月の満ち欠けは北欧の人々の信仰や生活にも大きな影響を与えていました。
ラグナロクでは月は一度失われますが、その後の新世界では再び秩序が回復されるとされています。
このように、月は神話の中で重要な役割を担う存在なのです。