


女神フレイヤと猪ヒルディスヴィニ
フレイヤが相棒の猪ヒルディスヴィニに跨って予言者ヒュンドラのもとへ向かう場面。
北欧神話では「豚(猪)」が豊穣と護りの象徴として語られる事が多い。
出典:『Hyndla og Freia by Frolich』-Photo by Lorenz Frolich/Wikimedia Commons Public domain
「えっ、豚が神話に出てくるの?」──そう思った人、きっと多いですよね。
でも北欧神話では、豚や猪がただの家畜じゃなくて、神さまや英雄に仕える“神聖な存在”として活躍しているんです!
女神の乗り物として登場したり、夜を照らす黄金の毛をなびかせて走ったり、はたまた毎日食べられてはよみがえる“宴の主役”だったりと、まさに豚・猪が大活躍!
というわけで、本節では北欧神話に登場する「豚(猪)」に注目して、戦乙女フレイヤの猪ヒルディスヴィニ・光を運ぶ神の乗騎グリンブルスティ・不死の肉セーフリームニル──この3つの伝説を通して、その魅力をたっぷりとご紹介していきます!
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最初に紹介するのは、愛と戦いの女神フレイヤが乗っていたという神聖な猪、ヒルディスヴィニ。
この名前は「戦いの猪」という意味で、フレイヤが戦場へ赴くときにまたがっていた特別な存在。 馬ではなく猪に乗るという意外性が、いかにも北欧神話らしいですよね。
この猪、見た目はどうやらかなり大きく、鋭い牙を持っていたと伝えられています。
なんとこのヒルディスヴィニには、ちょっとロマンチックな裏話があるんです。
『詩のエッダ』の中には、ヒルディスヴィニの正体は、フレイヤの恋人・オッタルがドワーフの魔法で変身した姿だという説話も残されています。
つまり、ただの乗り物ではなく、愛と絆の象徴としての役割も担っていたのかもしれません。
フレイヤとともに並んで走るヒルディスヴィニの姿──想像するだけで胸が熱くなりますね。
続いては、豊穣と太陽の神フレイが乗っていた猪、グリンブルスティについて。
この猪の名前には「輝く鬣(たてがみ)」という意味があり、まさに金色に光る毛を持つ神聖な猪として登場します。
この姿は、闇を照らし、大地を照らし、希望を運ぶ“光の使い”のようでもありますね。
グリンブルスティは、名匠として知られるドワーフ兄弟が魔法の鍛冶技術で生み出した存在。ただの猪ではなく、空も海も走れる超高速の乗り物として、フレイの冒険をサポートしました。
北欧の人々にとって、長く厳しい冬を越えて春を連れてくる太陽の存在は、命にかかわる大切なものでした。
だからこそ、この黄金の猪は「再生と光の象徴」として、神話の中で特別な位置を占めているんですね。
そして最後に紹介するのが、ヴァルハラの大広間で毎晩調理される不思議な猪、セーフリームニル。
この猪、いったん煮込まれて戦士たちにふるまわれるんですが、次の日にはまた生き返るという驚きの設定をもっています。
まさに「不死の食材」!
この存在は、死後の世界がただの静けさではなく、戦いと宴が永遠にくり返される場所だったという、北欧神話独自の死生観をよくあらわしているんです。
セーフリームニルは、ただのごちそうではありません。
その肉を食べることで、戦士たちは次の日の戦いにもまた立ち向かう力を得るんです。 つまりセーフリームニルは、「再生」「強さ」「仲間との絆」を象徴する存在だったと言えるでしょう。
北欧神話の宴には、命と栄光を祝う意味が込められていたんですね。
ちょっと変わった「神聖な豚たち」の物語──でもそこには、人間らしい感情や祈りが、しっかりと刻まれていたんです!
🐽オーディンの格言🐽
豚とは──されど、わしらの記憶では「力と祈りのかたち」として語り継がれておる。
愛しきフレイヤの乗騎ヒルディスヴィニは、戦と愛のはざまを駆ける“誓いの獣”。
グリンブルスティの鬣は、闇を裂きて春を呼ぶ「光の使い」なのじゃ。
そしてセーフリームニル──命を宿し直すその肉は、英霊たちを再び戦場へと立たせる祝福。
三頭の猪は、ただの獣にあらず、それぞれの「再生と絆」を静かに語っておる。
見た目に惑わされるでないぞ、真なる神性は時に牙と鼻を持って現れるのじゃからな。
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