北欧神話版「ポセイドン(ギリシャ神話の海と地震の神)」といえば?

北欧神話の「ポセイドン」的神格とは

北欧神話の海神ニョルズは、風と波、そして豊かさを司る穏やかな神格だ。ポセイドンのように嵐を起こすのではなく、海の恵みと航海の安全をもたらす神として人々に敬われた。荒ぶる海を鎮め、平和と富を運ぶその姿は、北欧らしい静かな力を象徴しているといえる。

海と富を司る神・ニョルズを通して探る北欧神話のポセイドンを知る

海と航海を司る神ニョルズ(北欧のポセイドン的存在)

海の神ニョルズ(ギリシャ神話のポセイドン的存在)
風と波、航海と富を司る海神で、漁民や商人に加護を与える存在。
ギリシャ神話のポセイドンに重ねて語られる代表的イメージ。

出典:『Njordr』-Photo by Unknown/Wikimedia Commons Public domain


 


海を支配する神といえば、真っ先に思い浮かぶのがギリシャ神話のポセイドン
荒々しい波と地震を起こし、時に恐ろしい怒りを見せながらも、船乗りたちにとっては欠かせない守護神でした。


それに対して、北欧神話で「海」と「富」の神とされるのがニョルズです。
戦いではなく豊かさと平穏をもたらすその姿は、同じ“海の神”という括りのなかでも、まったく異なる性質を感じさせてくれます。


どちらも海を司りながら、「怒りの神」と「富の神」という対照的な顔を持つ──この違いが、文化や価値観の違いそのものを映し出しているように思えるんです。


というわけで本節では、「北欧神話のポセイドンとは?」というテーマから、ポセイドンの特徴・ニョルズとの共通点・そして両者の違いについて、詳しく探っていきましょう!



ポセイドンの特徴──怒れる海と地を揺らす力

ポセイドンは、クロノスとレアの子であり、ゼウスとハデスの兄弟。
海・地震・馬を司る神として、ギリシャ神話の中でも非常に力強く、しばしば恐れられる存在です。


彼は海を支配する王として、三叉の槍トライデントを手にし、嵐を起こしたり地震を引き起こしたりします。
船乗りにとっては畏敬の対象であり、機嫌を損ねてはいけない存在でした。


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気まぐれで激しい性格

ポセイドンはしばしば怒りっぽく、人間や他の神々に対して強い感情をあらわにします
たとえば、トロイア戦争では人間たちの行動に怒り、巨大な波で罰を与える場面も描かれています。


自然の猛威そのものを神格化したような存在──それがポセイドンの本質なのです。


ニョルズとの共通点──海に生きる神としての姿

北欧神話において海と財の神とされているのが、ヴァン神族に属するニョルズです。
彼は漁業や航海に恵みをもたらす神として知られ、海辺に暮らす人々にとってはとても親しまれる存在でした。


また、ニョルズは「財産と繁栄の神」でもあり、海の恵みがそのまま豊かさと結びついていたことを示しています。


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海の恵みは“穏やかな富”

ポセイドンが荒波や嵐を象徴するのに対して、ニョルズはむしろ穏やかな航海や豊漁の象徴とされています。
海を恐れる対象としてではなく、「育ててくれる存在」として見ていた北欧の人々の心が、ニョルズという神格に反映されているのでしょう。


この点において、ポセイドンとニョルズは同じ海の神でも役割や気質が大きく異なることが見えてきます。


❄️ニョルズとポセイドンの共通点まとめ❄️
  • 海との結びつき:ニョルズは風と海、航海と豊漁を司るヴァン神族の神であり、ポセイドンは海そのものを支配するオリュンポスの神として、いずれも水域を統べる神格である。
  • 航海と漁業の守護者:ニョルズは特に漁師や航海者にとって重要な守護神であり、ポセイドンもまた船乗りや海上の安全を願う者から崇拝された。
  • 自然の力を象徴する存在:両者はともに海という制御困難な自然の力を象徴しており、人間にとって畏怖と恩恵の両面をもつ存在とされている。


ニョルズとの違い──支配の神と、調和の神

同じ「海の神」ながら、ポセイドンとニョルズはその神話的な立ち位置がまるで違います


ポセイドンはゼウスに次ぐ力を持つ存在として、しばしば神々の間でも対立を引き起こす存在でした。
彼は自分の力を主張し、地上世界の支配権をめぐって他の神々と競うこともしばしばありました。


一方、ニョルズは争いを避け、平和と豊かさをもたらす調停者として描かれる場面が多いんです。


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戦神族アースと、豊穣神族ヴァンの違い

ニョルズは元々ヴァン神族で、アース神族との和平の象徴としてアースガルズにやってきた神です。
そのため、争いよりも調和・交換・自然との共生といった価値観を体現する存在なんですね。


さらに彼の娘は美と愛の女神フレイヤ、息子は豊穣の神フレイ。
この点でも、ニョルズの“家系”は全体として命を育む力と結びついていることがわかります。


つまり、ポセイドンが「海の恐怖と支配」の象徴であるのに対し、ニョルズは「海の恵みと調和」の象徴
それぞれの神話が、自然をどう捉えていたか──その違いが、ふたりの海神の性格にもはっきりと表れているのです。


❄️ニョルズとポセイドンの違いまとめ❄️
  • 海の支配の範囲:ニョルズは穏やかな海、航海の安全、豊漁など「海の恵み」を中心に司るが、ポセイドンは嵐・地震・津波など「荒ぶる海と地の力」をも支配し、破壊的な自然の力を体現する。
  • 性格と描写:ニョルズは温厚で平和的な神として描かれ、争いや暴力とは距離を置いている。一方、ポセイドンは気性が激しく、怒りによって災厄をもたらすなど、力と激情を象徴する性格を持つ。
  • 神族と世界観:ニョルズは自然や豊穣を重視するヴァン神族に属し、アース神族と和平の象徴として迎えられた。一方、ポセイドンはゼウスの兄として神々の主流派であるオリュンポス十二神に属し、権力構造の中核を担っている。


🌊オーディンの格言🌊

 

嵐を巻き起こす神もおれば、波を鎮める神もおる──ニョルズは後者じゃ。
戦の槍ではなく、風と潮を穏やかに調える言葉をもって、民に恵みをもたらしてきた。
ヴァン神族より来たりしあやつは、争いの中から“和”を運んできた調停の使い手。
「力なくして導く道もまた、神の在りようのひとつ」
スカジとのすれ違いすら、あやつの“海とともに生きる決意”の証であろう。
わしらの物語において、海とは怒りではなく“豊かさと帰還”を意味する。
──それを静かに体現したのが、ニョルズという名の神なのじゃ。