北欧神話のバルドルとロキの関係とは?

北欧神話の中でも特に悲劇的な物語の一つが、バルドルロキの関係です。バルドルは光輝く美しき神として愛される存在でしたが、ロキの策略によって死へと追いやられます。この出来事は、やがてラグナロク—神々の終焉—へとつながる運命を決定づけることとなるのです。

 

本記事では、バルドルとロキの関係を深掘りし、神話の背景やその後の影響について詳しく解説していきます。

 

 

バルドルとロキの関係

バルドルとロキは、ともにアース神族に属していましたが、その性質はまるで正反対でした。バルドルは純粋で善なる神、ロキは狡猾でトリックスター的な存在です。二人の間には決定的な出来事があり、それが北欧神話の中でも最も重要な悲劇へとつながります。

 

バルドルとは?

バルドルは、オーディンとフリッグの息子であり、光の神として知られています。その姿は美しく、神々の間でも特に愛される存在でした。彼は純粋無垢で、戦争や争いとは無縁の神であったため、神々の楽園アースガルズにおいて平和の象徴でもあったのです。

 

ロキとは?

ロキは、アース神族とヨトゥン(巨人族)の間に生まれた存在で、知恵と変身能力を持つトリックスターの神です。彼は神々の間で友として迎えられていましたが、その本性は悪戯好きで、時に神々に害を及ぼすこともありました。

 

バルドルの死の予兆

バルドルの運命を決定づける出来事は、彼の見た夢から始まります。

 

バルドルの悪夢

あるとき、バルドルは不吉な夢を見るようになりました。彼は自らの死を予感し、そのことを母であるフリッグに伝えます。

 

フリッグはこの夢を深刻に受け止め、息子を守るためにありとあらゆる物に「バルドルを傷つけないよう誓わせる」ことにしました。こうして、すべての武器や生物、石、木々までもがバルドルを害さないことを誓ったのです。

 

ロキの策略

バルドルは不死身となったかのように見えましたが、ロキはこの誓いの穴を見つけ出します。

 

唯一の例外

フリッグは、誓いを交わす際にヤドリギという小さな植物を除外していました。「あまりに小さく、弱々しいから」と考えたのです。

 

ロキはこれを見逃しませんでした。彼はヤドリギを使ってバルドルを殺す方法を思いつきます。

 

ホズを利用した陰謀

バルドルが不死身であることを祝うかのように、神々は彼に向かって槍や石を投げつける遊びを始めました。もちろん、どの武器もバルドルを傷つけることはありませんでした。

 

しかし、ロキは盲目の神ホズに近づき、彼の手にヤドリギの矢を握らせます。そして、「みんながやっているように、お前もバルドルに向かって矢を放つといい」とそそのかしたのです。

 

ホズはロキの言葉を信じ、矢を放ちました。その瞬間、ヤドリギの矢はバルドルの胸を貫き、彼はその場に倒れ込んでしまいます。こうして、光の神バルドルは死を迎えたのです。

 

バルドルの死がもたらした影響

バルドルの死は、神々にとって大きな衝撃を与えました。

 

ヘルヘイムへの旅

バルドルの魂は、死者の国ヘルヘイムへと送られます。オーディンは死んだ息子を取り戻すために、使者を派遣し、冥界の女王ヘルにバルドルの返還を求めました。

 

ヘルは「すべての存在がバルドルの死を悲しむなら、彼を解放しよう」と提案しました。

 

ロキの逃亡と最期

神々はロキの裏切りを知り、彼を捕らえようとしました。ロキは一度は逃亡しますが、最終的に神々の手によって捕らえられます。そして、彼の息子の腸で縛られ、蛇の毒を滴らされるという残酷な罰を受けることとなるのです。

 

ロキはやがてラグナロクにおいて復讐を果たし、神々との最終決戦に挑むことになります。

 

ラグナロクへと続く道

バルドルの死は、北欧神話において決定的な出来事でした。

 

神々の終焉

バルドルの死をきっかけに、神々の間に不和が広がります。やがてラグナロク—世界の終末—が訪れ、神々と巨人たちの最終決戦が勃発することになります。

 

バルドルの復活

ラグナロクの後、新しい世界が訪れます。そして、その世界ではバルドルが復活し、新たな時代を築くとされています。バルドルは希望の象徴として、新しい世界を導く存在となるのです。

 

バルドルとロキの関係は、北欧神話の中で最も象徴的な悲劇の一つです。ロキの策略によってバルドルが命を落とし、それがラグナロクへとつながる運命を決定づけることとなりました。しかし、ラグナロク後の世界ではバルドルが復活し、新たな希望をもたらす存在となるのです。