


女神イズンと夫ブラギ
ハープを演奏するブラギとその後ろに立つイズン。
若返りのリンゴを持ち、慎ましく立つ姿が、献身的で守護的な性格を伺わせる。
出典:『Idunn and Bragi by Blommer』-Photo by Nils Jakob Blommer/Wikimedia Commons Public domain
若さを保つ黄金のリンゴを守り、アース神族に欠かせない存在として知られるイズン。彼女がいなければ、神々は老いてその力を失ってしまう…そんな重要な役割を果たしながらも、前に出過ぎず、静かに神々を支え続けるその姿には、深い魅力がありますよね。
また、詩の神ブラギとの関係にも表れているように、イズンは「支えること」を選ぶ力に満ちた神。まさに「守護者」としての性格がにじみ出ています。
本節ではこの「イズンの性格」というテーマを、誠実で尽くすような性格・柔らかく包み込むような優しさ・そして揺るぎない芯の強さ──という3つの視点に分けて、ざっくり楽しく紐解いていきたいと思います!
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まず最初にお伝えしたいのは、イズンの持つ献身的な性格についてです。
彼女の最大の役目は、「黄金のリンゴ」を守り、それを神々に与えること。このリンゴは食べることで老化を防ぎ、若さを保つ力があるとされており、神々にとってはまさに命綱ともいえる存在なんですね。
それを、誰よりも大切に、誰よりも真面目に、イズンは管理し続けてきました。
イズンは決して、目立とうとはしません。それどころか、自分のことよりも神々の健康を優先して動いています。
たとえば、あるときロキにだまされて巨人の国へ連れ去られた際、彼女が姿を消しただけで、神々はどんどん老いていきました。
それほどまでに、彼女の献身が日々の“土台”になっていたということなんです。
自分が何を背負っているかを理解しながら、それを黙々と守り続ける。まさに「支えることを使命とする神」と言える存在ですね。
次に注目したいのが、イズンの思いやりの深さです。
北欧神話に登場する女神のなかには、戦いや策略を得意とする者も多くいますが、イズンはそのどちらにも属さない、とても穏やかで静かな性格とされています。
とくに夫である詩の神ブラギとの関係からも、彼女の内面が見えてきます。
ブラギ(詩と雄弁の神)は、言葉で感動を生み出す神です。一方イズンは、言葉よりも「行動」や「存在」で人を支える神。
2人はまるで、言葉と沈黙、表現と静寂が手を取り合っているような関係なんです。
互いの役割を理解し合いながら支え合うこの夫婦関係からも、イズンの優しさや包容力が感じられます。
ただ甘いだけの存在ではなく、そっと見守るような思いやりが、彼女の中にはしっかり息づいているんですね。
最後に取り上げたいのが、イズンの芯の強さという側面です。
一見おとなしく、争いごととは無縁に見えるイズンですが、じつは「ただ守るだけ」の存在ではないんです。
巨人にさらわれたとき、彼女はただおびえていただけではありません。ロキが助けに来たとき、すぐに鷹に変身して逃げられるよう準備していた──という描写があるんです。
北欧神話では、弱さを見せる神も少なくありませんが、イズンは「守られるだけの存在」ではなく、自分で自分の役割をしっかり果たそうとする意志を持っています。
彼女の強さは、剣を持つわけでも怒鳴り声を上げるわけでもなく、「絶対にあきらめない姿勢」や「自分の居場所をまもり続ける力」からきています。
静かだけど、ブレない。優しさと同時に強さもある──それがイズンという女神の、最大の魅力なのかもしれません。
というわけで本節では、北欧神話に登場する女神イズンの性格について、3つの面から見てきました。
献身的にリンゴを守り、神々の健康と若さを支え、夫ブラギとのあたたかな関係を保ち、そしていざというときには折れない芯を見せる──そんなイズンの姿は、まさに「守護する存在」の象徴と言えます。
派手さはないけれど、だからこそ光る神。イズンのような存在がいるからこそ、神々の世界は成り立っているんだなあ…と、しみじみ感じてしまうわけです。
🍎オーディンの格言🍎
力ある者が誉れ高きにあらず──真に尊きは、黙して支える者よ。
イズンの手にある林檎は、わしら神々の「命の灯火」を繋ぎとめておる。
彼女は叫ばぬ、闘わぬ──されど神々の若さと時の流れを一身に背負い、静かに守り抜いてきたのじゃ。
夫ブラギと奏でる詩の調べもまた、彼女の優しき息遣いに満ちておる。
さらわれてもなお戻り、笑みすら浮かべて職務に戻る──これぞ真の強さ。
イズンよ、その献身は「世界樹の記憶」に刻まれ、永劫に語り継がれよう。
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