


巨人と戦うトール
雷神トールが巨人へ一直線に突撃する場面。
勇敢で直情的な性格を象徴的に描いた名画。
出典:『Thor's Fight with the Giants』-Photo by Marten Eskil Winge/Wikimedia Commons Public domain
雷鳴とともに空を駆け、巨人たちに立ち向かう──北欧神話のなかでも、とびきり派手で強くて、そして親しみやすい神さまといえば、やっぱりトールです。
彼は雷神であり、アース神族の守護者として、しばしばヨトゥン(巨人族)との激しい戦いを繰り広げています。その雄姿は力強く、ちょっと荒っぽいけれど、裏表がなくてまっすぐなところが大きな魅力です。
でも一方で、「すぐカッとなる」「力で解決しがち」といった、ちょっと困った一面もあって…そのあたりも含めて、トールの人間味あふれる性格を探ってみたいと思います。
本節ではこの「トールの性格」というテーマを、直情的で感情に素直な性格・力を信じる豪快な性格・仲間を守る責任感あふれる性格──という3つの視点から、ざっくり楽しく紐解いていきたいと思います!
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まずは何といっても、トールの直情的な性格。思ったことは口に出し、感じたことは拳に変わる…そんなストレートさが彼の大きな特徴です。
たとえば、敵であるヨトゥン(巨人族)との戦いでは、迷わず戦場に向かい、豪快なハンマーさばきで次々と相手をなぎ倒していきます。
「まず考えてから動く」ではなく、「まず動いてから考える」タイプですね。
トールはとにかく怒りっぽい。誰かが神々を侮辱したり、仲間をバカにしたりすると、すぐに真っ赤な顔で怒り出し、ハンマーを構えます。
でもそれは、正義感や仲間思いの気持ちが強すぎるからこそ。つまり、「悪意のない怒り」なんです。
感情を抑えるのが苦手だけど、そのぶん裏表がない。そういう素直さが、彼の大きな魅力でもあるんですよね。
次に紹介するのは、トールの豪快で力任せな性格。
彼が持つミョルニル(雷のハンマー)は、敵を一撃で粉砕する最強の武器。トールはこの武器を振るうとき、いちいち細かく作戦を立てたりしません。「敵がいる? よし、ぶっ飛ばそう!」というノリです。
そんな彼の戦いぶりは、神話のなかでもひときわ派手で迫力があります。
たとえばある話では、トールは変装して女装までして敵の陣地に潜入し、最終的には正体を明かして結婚式の場をぶち壊して大暴れします。
「どうせバレるなら、全部ぶち壊せばいい!」というのがトールらしさ。緻密さよりも豪快さ、論理よりも感覚で動くのがこの神の真骨頂です。
武力と自信をまっすぐに使う潔さは、北欧神話の中でも一際わかりやすくて、カッコいいですね。
最後に見ておきたいのは、トールの責任感の強さです。
一見ただの力自慢の戦闘屋に見えるかもしれませんが、実は彼はアースガルズ(神の国)の守護神として、神々の平和を守るという重大な役割を背負っています。
敵が攻めてきたときに真っ先に立ち向かうのは、たいていトール。しかも、彼が守っているのは神々だけじゃなく、人間たちの世界ミズガルズも含まれているんです。
「自分が戦うことで、みんなが安心して暮らせるならそれでいい」──そんな気持ちが、トールの行動には込められているのかもしれません。
誰かに頼まれたわけじゃないけれど、自分がやるべきだと信じて動く。それが、彼なりの“正しさ”なんですね。
勇ましいけれど、どこか不器用で、でも本気で仲間を守ろうとする姿。まさに「頼れるけど放っておけない」タイプの神さま、それがトールなんです。
というわけで本節では、北欧神話の雷神トールの性格について掘り下げてみました。
直情的で素直な怒りを持ち、豪快で力を信じる戦い方をし、そして神々と人間を守ろうとする責任感にあふれている──そんなトールの姿には、どこか子どものような純粋さと、大人としての強さが同居しています。
豪快で乱暴に見えても、その根っこにあるのは「守るべきものへの想い」。だからこそ、トールは北欧神話の中でも、ひときわ“愛されるヒーロー”なのかもしれませんね。
⚡オーディンの格言⚡
トールよ、わしが最も信を置く“盾”──力に任せて突き進むその姿、愚直にして尊し。
巨人の影が差せば真っ先に飛び込み、仲間が傷つけば雷鳴で応える。
怒りの火種は己のためではなく、正しきものを守るための焔なのじゃ。
失敗しても立ち止まらぬ、その歩みこそが、神々の砦となる。
剣より先に拳が動く、知恵より先に心が動く──それがトールという男。
不器用ゆえに、誰よりも真っすぐ。それが、わしらが彼を愛する理由よ。
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