


太陽の女神ソールと月の神マーニ
ソールは、馬車で天空を駆ける太陽の化身で、月の神マーニと対を成す存在。
狼に追われながらも世界に昼をもたらすと語られる。
出典:『Mani and Sol by Lorenz Frolich』-Photo by Lorenz Frolich/Wikimedia Commons Public domain
朝日が差し込むと、なんだか元気が出ますよね。そんな太陽の光は、昔から人々の暮らしと心を支えてきました。もちろん、北欧神話の中にも太陽に関わる神々がちゃんと登場します。
ただし、北欧の太陽神は、ギリシャ神話のアポロンのように派手で目立つ存在ではありません。それでも彼らは、毎日を支える「欠かせない存在」として語り継がれてきました。
本節ではこの「太陽神」というテーマを、ソール・グローア・スキンファクシ──という3つのキャラクターを通して、ざっくり楽しく紐解いていきたいと思います!
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まず最初に紹介するのは、北欧神話で「太陽そのもの」を運ぶ神として知られる女神、ソール(Sól)です。
彼女の名前はそのまま「太陽」を意味します。父親ムンディルファリが、自分の娘に「太陽」と名づけるという破天荒なことをしたため、神々の怒りを買い、ソールは実際に天の馬車で太陽を運ぶ役割を与えられることになりました。
ソールが乗る馬車には、アールヴァクとアルスヴィズという2頭の神聖な馬が引いており、彼女は毎日空を駆けて太陽を運びます。
でもその後ろには、スコルという狼が常に彼女を追いかけているんです。このスリリングな設定、実は「日食」の神話的な説明でもあるんですね。
そしてラグナロクの日には、ソールはスコルに追いつかれ、ついに飲み込まれてしまうといわれています。でもご安心を──ソールの娘が、そのあと新しい太陽を運ぶという話も残っていて、「再生」の希望が描かれているんです。
次に紹介するのは、直接太陽を運ぶ神ではないけれど、太陽のようにあたたかな力をもった女神、グローア(Gróa)です。
彼女は民間伝承に登場する魔法使いのような存在で、薬草の知識や癒しの呪文に通じた女性。名前の意味も、「芽生え」や「成長」を連想させるもので、春の陽だまりのような力を象徴していると考えられています。
『詩のエッダ』の中では、トールが戦いで石片を頭に受けたとき、グローアが呪文でその石を抜こうとする場面があります。この描写からも、彼女が命をつなぐ“あたたかい光”のような存在だったことが伝わってきます。
また、死後も息子のために助言の霊として現れるなど、太陽のように「見守り、育てる力」を象徴するキャラクターともいえるんです。
グローアは、静かでやさしい「太陽の力」を象徴している女神なんですね。
最後に紹介するのは神ではありませんが、「太陽の訪れ」を象徴する特別な馬、スキンファクシ(Skinfaxi)です。
名前の意味は「光り輝くたてがみ」。この神馬は、昼をつかさどる神ダグ(Dag)の乗り物として、毎朝空を駆け、夜を追いやって昼をもたらします。
スキンファクシのたてがみは金のように光り輝いていて、それが空にまばゆい光を広げると信じられていました。
つまり、「太陽を運ぶ馬」として、ソールとは別のかたちで光と昼の訪れを象徴する存在だったんですね。
そして何より、北欧の人々にとって、朝が来ることそのものが神聖だったということのあらわれでもあります。
このように、神格はなくとも、スキンファクシは「光の運び手」として、太陽神に近い立ち位置を担っていたのです。
というわけで、本節では北欧神話における「太陽神」というテーマで、ソール・グロー・スキンファクシの3者を紹介しました。
空を駆ける太陽神ソールは、日々の光と終末の物語を背負う少女。知恵と癒しの力を持つグローアは、静かに人を育む光。そしてスキンファクシは、朝を連れてくる神馬として空を輝かせます。
それぞれが、ちがったかたちで「太陽のような存在」として、光と時間、命の流れを表しているんですね。
神話の太陽は、ただ明るいだけじゃなくて、人生を照らし、支えてくれる存在でもある──そんなことを、北欧神話は静かに教えてくれるんです。
🌞オーディンの格言🌞
ソールの馬車が空を駆けるとき、世界はまばゆき光に包まれる。
だが忘れてはならぬ──その光は、常に闇に追われながらも差し伸べられておる。
スコルの牙が近づこうとも、彼女は走るのをやめぬのじゃ。
真の光とは、逃げながらも照らし続ける“意志”に宿るのじゃ。
やがて訪れるラグナロクでソールが倒れようとも、娘がその光を継ぎ、世界はまた朝を迎える。
光は絶えぬ──それがわしらの物語の根にある希望なのじゃ。
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