北欧神話の「ケルベロス」的存在といえば?

ギリシャ神話に登場するケルベロスは、冥界の門を守る三つの頭を持つ番犬として有名です。それでは、北欧神話において「冥界の番犬」のような存在はいるのでしょうか?

 

結論から言うと、北欧神話におけるケルベロス的な存在は、冥界ヘルヘイムの門を守る怪物ガルム(Garmr)です。彼は「血にまみれた狼」とも「吠え続ける番犬」とも言われ、ラグナロク(世界の終末)の際にオーディンの子である戦神テュールと壮絶な戦いを繰り広げるとされています。

 

本記事では、北欧神話の「ケルベロス」的な番犬ガルムについて詳しく解説していきます。

 

 

ガルムとは何者なのか?

北欧神話に登場するガルム(Garmr)は、冥界ヘルヘイムの門を守る獣であり、「北欧神話のケルベロス」とも言える存在です。

 

ガルムの特徴

ガルムは、『詩のエッダ』や『散文のエッダ』などの古典資料に登場し、主にヘルの門番として描かれます。

 

ガルムの特徴
  • ヘルヘイムの門番:死者の魂が逃げないように冥界の入り口を守る。
  • 血にまみれた姿:ガルムの体は血に塗れ、獰猛な姿をしているとされる。
  • ラグナロクで戦う:終末の日には、戦神テュールと戦い、相打ちとなる。
  • 「最恐の犬」と呼ばれる:『詩のエッダ』では「フェンリルの次に恐ろしい獣」とも記されている。

 

ケルベロスとの違い

ガルムはギリシャ神話のケルベロスと似た役割を担っていますが、以下のような違いがあります。

 

ガルムとケルベロスの違い
  • 頭の数:ケルベロスは3つの頭を持つが、ガルムは1つの頭を持つ。
  • 役割:ケルベロスは冥界に「侵入者が入らないように」守るが、ガルムは「死者が逃げ出さないように」守る。
  • 最終的な運命:ケルベロスは冥界にとどまり続けるが、ガルムはラグナロクでテュールと相打ちになる。

 

ガルムとラグナロク

北欧神話の終末の日であるラグナロクでは、ガルムもまた重要な役割を果たします。

 

吠え声が終末の号砲に

『詩のエッダ』の「巫女の予言(ヴォルスパー)」によると、ガルムの吠え声がラグナロクの始まりを告げるとされています。

 

テュールとの最終決戦

ラグナロクが始まると、ガルムは冥界から飛び出し、戦神テュールと対峙します。

 

ガルム対テュール
  • テュールとは?戦と正義を司る神で、片腕を失っている。
  • 戦いの結末:テュールはガルムを倒すが、自身も致命傷を負い、相打ちとなる。
  • ラグナロクの混乱の一部:この戦いは、神々と巨人族の最終決戦の一部として語られる。

 

ガルムの正体

一部の学者は、ガルムはフェンリルと同一の存在ではないかと考えています。 というのも北欧神話では、フェンリルもまたラグナロクで神々と戦う巨大な狼として登場します。そのため、ガルムとフェンリルは同じ存在の異なる側面を表している可能性があるわけです。

 

ガルムとフェンリルの共通点
  • どちらも「吠える獣」:ガルムは「吠える犬」、フェンリルは「世界を飲み込む狼」とされる。
  • どちらもラグナロクで戦う:ガルムはテュールと戦い、フェンリルはオーディンを飲み込む。
  • どちらも冥界とのつながりがある:フェンリルはロキの子であり、ガルムはヘルの門を守る。

 

ただし、これに関しては学者の間でも意見が分かれており、ガルムはフェンリルとは別の存在であるとする説も根強くありますね。

 

まとめ

北欧神話における「ケルベロス」的な存在は、冥界の門を守る番犬ガルムです。

 

  • ガルムはヘルヘイムの門を守る血にまみれた獣であり、ケルベロスのように冥界の境界を守る役割を担っている。
  • ラグナロクでは、戦神テュールと戦い、相打ちになるという壮絶な運命を持つ。
  • フェンリルと同一視されることもあるが、別の存在として解釈されることが一般的。

 

このように、ガルムは北欧神話の中で重要な役割を果たす、「北欧版ケルベロス」とも言える存在なのです。