


猫の戦車を駆る女神フレイヤ
愛と美と豊穣を司る北欧の女神で、ギリシャ神話のアプロディテ的存在として語られる。
出典:『Freyja riding with her cats (1874)』 - Photo by Ludwig Pietsch / Wikimedia Commons Public domain
ギリシャ神話に登場する「アフロディテ」といえば、愛と美を司る華やかな女神として知られていますよね。
では、北欧神話においてアフロディテのような存在は誰なのでしょうか?
候補としてまず浮かぶのが、やはりフレイヤ。
ただ美しいだけではなく、魔法や死、戦場にまで関わる深みのある女神として、アフロディテとは一味違った魅力を放っています。
神話が違えば、女神の性格もまったく異なる──そうした発見もまた、神話を読み比べる面白さのひとつです。
というわけで本節では、「北欧神話のアフロディテ」を探るというテーマで、アフロディテの特徴・フレイヤとの共通点・そしてふたりの違いという3つの切り口から、その神秘にせまってみましょう!
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アフロディテは、ギリシャ神話に登場する愛と美の象徴のような女神です。
海の泡から生まれたという神秘的な誕生神話を持ち、その姿は神々の中でもひときわまぶしく、人も神も虜にしてしまうと語られています。
その魅力は見た目の美しさだけにとどまらず、恋愛、性愛、結婚、嫉妬、誘惑といった人間の本能に深く結びつく領域を司っている点も特徴です。
たとえば「トロイア戦争」のきっかけとなった“黄金の林檎”のエピソードでは、女神たちの中で誰がいちばん美しいかを争う場面に関わっており、その結果、大規模な戦争が起きてしまったことも有名ですよね。
ただ美しいだけの存在ではなく、愛ゆえの争いや悲劇を引き起こす側面も持っているのがアフロディテの深みであり、単純に“いい女神”とは言えないところに、物語としての面白さがあります。
北欧神話で「愛と美」を司る代表格といえば、やはりフレイヤの名前が最初に挙がります。
その名も「女神(フレイヤ)」を意味し、愛、性愛、豊穣、戦、死、魔術といった、非常に広い領域を司っている点が特徴です。
アフロディテと同じように、フレイヤもその美しさで神々や巨人たちを魅了する存在として描かれています。
神々の宝「ブリーシンガメン」を手に入れるために、ある大胆な取引をした話も、彼女の妖艶な一面をよく表しています。
特に注目すべきなのは、フレイヤが「セイズ」と呼ばれる魔法の使い手であるという点です。
このセイズは未来を見通したり、感情や運命を操る力があるとされ、アフロディテには見られない能力です。
それでも、美しさで人の心を動かし、愛と欲望に大きく関わるという意味では、アフロディテとの共通点は非常に多いといえるでしょう。
一方で、フレイヤとアフロディテの最大の違いといえば、やはり「死」と「戦い」に対する関わり方です。
アフロディテは基本的に愛と美に特化していて、戦争が起きても戦場に立つことはありません。
彼女の力が戦争のきっかけになることはあっても、剣を取って戦うことはないんです。
でも、フレイヤは違います。
フレイヤは、戦場で亡くなった戦士たちの魂の半分を自らの館「セスルームニル」へ迎え入れる役目を持っているとされています。
これは、オーディンのヴァルハラと役割を分け合っているような形ですね。
つまり彼女は「死を見つめる美の女神」でもあるのです。
アフロディテがあくまで「生の欲望」に寄り添う存在であるのに対し、フレイヤは「生と死のあわいに立つ存在」として、より幅広い意味での“愛”や“情”を抱えているようにも感じられます。
この違いこそが、「北欧神話のアフロディテ」をフレイヤと呼ぶだけでは語りきれない深みを生んでいるのではないでしょうか。
北欧神話の女神たちには、いつもどこかに“陰”があり、それが強さや気高さに結びついているようで、とても魅力的です!
🌺オーディンの格言🌺
美しさとは、ただ愛されるためにあるのではない。
涙を流し、魔を制し、己の誇りを貫く中にこそ「真の輝き」が宿るのじゃ。
フレイヤは、愛に殉じ、戦に生き、魔を統べる“生ける矛盾”の象徴である。
アフロディテが恋を遊ぶなら、フレイヤは恋に傷つき、それでもなお立ち上がる。
猫の戦車に乗るあの姿に、ただの優雅さを見てはならぬ──あれは、意志ある美の具現じゃ。
愛を恥じず、涙を隠さず、抗いながらも自由を求めるその在り方は、まさに北の大地が育んだ魂の姿。
わしは知っておる。フレイヤの涙は世界を潤し、その怒りは死者をも動かすことを。
誇りを守る者に性別は要らぬ。ただ、己を偽らぬ心こそが神格の証なのじゃ。
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