


世界樹ユグドラシル
九界を結ぶ世界樹を中心に据えた宇宙観を示す挿絵。
ギリシャ神話とは世界の構造が大きく異なることを示す一枚。
出典:『Yggdrasil』-Photo by Oluf Bagge/Wikimedia Commons Public domain
神話の本を読んでいると、「この神さま、あの神話のキャラにちょっと似てるかも?」って思うこと、ありませんか?
雷を司るトールとゼウス、運命を操るノルンたちとモイライ、世界を支える構造にもどこか共通点が見えたりして、「北欧神話とギリシャ神話って、意外と似てる部分もあるんだなあ」って思えてくる瞬間があるんです。
でももちろん、まったく別の文化から生まれた神話だから、考え方や物語の進み方には大きな違いもあるんですよ。
というわけで、この章では「北欧神話とギリシャ神話の違い」というテーマについて、神々の性格と関係性・世界の成り立ちと構造・そして物語の“終わり方”──という3つの視点から、かみ砕きながら紹介していきます!
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まず注目したいのが、それぞれの神話に登場する神々の“性格”と“役割”です。
ギリシャ神話の神々は、とても強くて美しくて、ちょっと気まぐれだけどカリスマ性にあふれた「理想の存在」ってイメージがありますよね。
ゼウスやアポロン、アテナなど、どの神さまもパワフルで、きらびやかな神殿に住んでいて、まさに「神々しい」感じ。
一方、北欧神話の神々──たとえばトールやロキ、フレイヤ──は、喜んだり怒ったり失敗したり、とにかく感情豊かで“人間っぽい”んです。
たとえば、ギリシャ神話の神々は不死であり、世界の中心で“永遠の秩序”を守る存在ですが、北欧神話の神々は死にます。ラグナロクでの運命は避けられず、誰もが限られた時間を生きているんです。
この違いは、神々に対する考え方そのものを表しているようにも思えます。
ギリシャでは「理性」や「美」を重んじる文化が神々に反映されていて、北欧では「勇気」や「覚悟」といった“生き方”そのものが神の姿として語られているのかもしれませんね。
次に、それぞれの神話に描かれた世界の構造について見てみましょう。
ギリシャ神話の中心には、オリンポス山があります。そこには主神ゼウスをはじめとする神々が住んでいて、空や海、地底の世界がそれぞれ分かれているという、わりとシンプルな三層構造です。
それに対して、北欧神話の中心にはユグドラシルという巨大な世界樹が立っています。
ユグドラシルの根や枝の先には、「神の世界(アースガルズ)」「人間の世界(ミズガルズ)」「死者の世界(ニヴルヘル)」など九つの世界が存在していて、それぞれが異なる文化と生き物たちを持っているんです。
世界の成り立ちそのものが、ギリシャは「神々の秩序」ベース、北欧は「自然と混沌」のバランスベースという感じがしますね。
また、ギリシャ神話では世界の始まりが「カオス(混沌)」からの神々の誕生という流れですが、北欧神話では、氷と火の国のあいだに生まれた霜の巨人ユミルの体から世界が作られた、というちょっとダークで幻想的な始まり方をしています。
最後に、物語の“終わり方”に注目してみましょう。
実はギリシャ神話には、「世界の終わり」をはっきり描いたエピソードはありません。時代は「黄金の時代」から「鉄の時代」へとどんどん退化していきますが、それがどう終わるのかは語られていないんです。
それに対して北欧神話では、ラグナロクというはっきりとした終末が予言されています。
神々と巨人族が最終決戦を繰り広げ、ほとんどの神々が命を落とし、世界が炎に包まれる──という壮絶な結末。
ラグナロクのあとはすべてが終わるのかと思いきや、数人の神々と人間の子孫が生き残り、平和な新しい世界を作っていくという希望のストーリーが語られているんです。
「終わり=すべての終わり」ではなく、「終わりのあとに続く始まり」という発想は、北欧神話ならではの特徴かもしれませんね。
未来が定められていても、それを受け止め、勇敢に生き抜く神々の姿は、読み手に「どう生きるか」を考えさせてくれる気がします。
神話って、ただの昔話じゃなくて、生き方や価値観を伝える鏡みたいなものなんですね。
🌍オーディンの格言🌍
理想を掲げる山の神々と、運命に挑む木の神々──その違いは、ただの文化差では済まされぬ。
我らが物語は、「限りある命をどう燃やすか」にこそ価値を置く世界観で成り立っておる。
不死なる神よりも、終わりを知りながら歩む神こそが尊いのじゃ。
ユグドラシルは時をつなぎ、九つの世界を揺るがぬ枝葉で抱いておる。
その根には死と再生の息吹が満ち、混沌と秩序が渾然一体となって循環しておるのだ。
ギリシャの神々が永劫の支配を誇るならば、わしらは「いつか終わる」ことを知りつつ、なお戦う道を選んだ。
滅びは敗北にあらず──それは「次の光」を託すための通過点にすぎぬ。
わしらの血脈は、絶えぬ問いを孕みながら、終わりの先にこそ希望を蒔くのじゃ。
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