


世界樹ユグドラシルの図版
北欧神話の宇宙観を象徴する世界樹ユグドラシルを描いた書籍の扉絵。
リスのラタトスクや四頭の鹿、ニーズヘッグなども描かれている。
出典:『The Tree of Yggdrasil』-Photo by W. G. Collingwood/Wikimedia Commons Public domain
北欧神話って、読めば読むほど不思議な魅力に引きこまれていきますよね。
神々が戦うラグナロク、いたずら好きなロキ、そしてすべてをつなぐ巨大な木ユグドラシル──どの話にも独特の雰囲気があって、「他の神話とちょっと違うかも?」って思ったこと、ありませんか?
実は北欧神話には、他の地域の神話と比べてとても独創的な3つの特徴があるんです。それが、世界観・神々の姿・そして物語の終わり方に関するもの。
というわけで、この章では「北欧神話の3つの特徴」というテーマについて、巨大な世界樹ユグドラシル・神々の“人間っぽさ”・運命に抗えない物語──という3つのポイントに分けて、ざっくり紐解いていきます!
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世界樹ユグドラシルとその周囲の生き物を描いた挿絵
九つの世界をつなぐ巨大な一本の木として描かれた世界樹ユグドラシルで、幹や根元にはさまざまな動物たちが集う姿が表現されている。北欧神話最大の特徴である、多様な世界が一本の樹を軸に結びつく宇宙観を象徴する挿絵。
出典:『The Ash Yggdrasil』-Photo by Friedrich Wilhelm Heine/Wikimedia Commons Public domain
北欧神話といえば、やっぱり「ユグドラシル」は外せません。
ユグドラシルとは、世界の中心にそびえる巨大なトネリコの木で、この木の枝や根っこが、全部で九つの世界をつないでいるとされているんです。
このユグドラシルの構造が、北欧神話の世界観のベースになっていて、「神の世界(アースガルズ)」「人間の世界(ミズガルズ)」「巨人の世界(ヨトゥンヘイム)」など、それぞれの世界がこの木のどこかに位置していると考えられています。
つまり、ユグドラシルは神話の舞台セットであり、すべての世界をつなぐ“命のネットワーク”のような存在なんですね。
しかもこの木、ただの背景じゃなくて、ちゃんと生きてるんです。
枝を食べるシカや、根っこをかじるドラゴン、そして情報を運ぶリスなど、不思議な生き物たちもいっぱい関わってきます。
ユグドラシルが出てくるだけで、「この神話はちょっとスケールが違う!」って気持ちになりますよ。

花嫁衣装をまとい女神フレイヤに扮するトール
巨人スリュムに奪われたミョルニルを取り返すため、雷神トールが花嫁に、ロキが侍女に女装して巨人の館へ向かう『スリュムの歌(Þrymskviða)』の一場面。神々の「完璧」とはほど遠い一面を象徴する作品。
出典:『Tor sasom Freya』-Photo by Carl Larsson and Gunnar Forssell/Wikimedia Commons Public domain
北欧神話に登場する神々って、最強の力を持ってるわけじゃないし、完璧なわけでもないんです。
たとえば、雷神トールは怪力だけど頭はあんまり良くないし、いたずら好きのロキは仲間を困らせるばっかりだし、主神オーディンですら未来を知りながらも失敗することもあります。
北欧の神々は、喜んだり怒ったり悩んだりする姿がとてもリアルで、まるで昔話の登場人物みたいに親しみやすいんですよ。
ギリシャ神話の神々がオリンポスの頂きに座って「完璧で高貴な存在」っぽいのに比べて、北欧神話の神々はもっと地上に近い存在──という感じがします。
それに、神々はラグナロク(世界の終末)で命を落とす運命にもあるんです。
つまり、北欧の神々は「死なない存在」ではなく、「限られた時間を戦い抜く存在」。
この姿勢が、なんだかとても人間らしくて、つい応援したくなっちゃいますよね。

神々と怪物が激突する最終決戦ラグナロクの絵画
世界の終末が「決められた未来」として避けられないものと語られる北欧神話の終末戦争ラグナロクを描いた作品で、アース神族とロキ一族の怪物たちが最後の戦場でぶつかり合うクライマックスを表現している。
出典:『Johannes gehrts ragnarok mindre』-Photo by Johannes Gehrts/Wikimedia Commons Public domain
神話といえば「めでたしめでたし」で終わるもの、って思いがちかもしれません。
でも、北欧神話はちょっと違います。
この神話には、ラグナロクという“世界の終わり”が最初から決まっているんです。
しかも、それは変えられない未来。オーディンもトールもロキも、その運命を知っていながら、ただ迎え撃つしかないんですよ。
このラグナロクでは、神々も多くが命を落とします。
でも、だからこそ、神々の戦いには悲しさと勇ましさが同時に感じられるんです。
結末がわかっていても、それでも最後まで戦い抜こうとする姿は、「強い」っていうより「誇り高い」って言葉のほうがぴったりくるかもしれません。
そして、ラグナロクのあとには、新しい世界が生まれ、少数の神々と人間の子孫が新しい時代を始める──という希望の物語も語られています。
北欧神話は、終わりを語りながらも、そこに“再生”の芽をちゃんと残しているんですね。
未来を知っていても前に進む神々の姿からは、今の私たちにも通じる大切なことが見えてくる気がしませんか?
🌳オーディンの格言🌳
わしらの血脈は、ただ強さを誇るだけの物語ではない。
枝を伸ばすユグドラシルのごとく、天と地、始まりと終わりをつなぐ「命の交響」なのじゃ。
神々もまた、迷い、悩み、抗いながら時を歩む存在にすぎぬ。
トールの怒りも、ロキの企みも、わしの探求も──それぞれが運命に抗う意志の証。
されどラグナロクという「終幕の調べ」からは逃れられぬと、わしは知っておる。
それでも我らは戦い、語り、伝えるのだ。滅びの先に続く芽吹きのために。
ユグドラシルに巣くうリスや蛇すら、ひとつの運命の歯車。全てが役割を持ち、世界を奏でておる。
忘れるな──終わりとは閉じることにあらず。次の時代へ「継がれてゆく営み」こそが、わしらの物語の真骨頂なのじゃ。
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