
北欧神話の世界では、多くの植物が神々や伝説に深く関わっています。神話の中で特別な力を持つもの、神々に愛されるもの、または破滅の象徴となるものなど、その役割はさまざまです。
たとえば、世界樹ユグドラシルは宇宙の構造そのものを象徴し、ヤドリギは神々の最も悲劇的なエピソードのひとつに関係しています。本記事では、北欧神話に登場する重要な植物を詳しく解説していきます。
北欧神話には、神々や世界の成り立ちに関わる植物がいくつも登場します。
北欧神話において最も重要な植物が、宇宙を支える世界樹ユグドラシルです。
ユグドラシルの根は、神々の国アースガルズ、霜の巨人が住むヨトゥンヘイム、死者の国ニヴルヘイムへと伸びています。この木の根元には、知恵の泉ミーミルの泉や運命を司るノルンたちが住むウルズの泉があります。
ヤドリギは、北欧神話においてもっとも悲劇的な事件を引き起こした植物です。
ヤドリギはもともと弱々しい植物で、武器にはならないと考えられていました。しかし、悪戯好きのロキがこの植物を使ってバルドルを殺害する策を巡らせます。これによって、北欧神話最大の悲劇が生まれました。
植物は、北欧神話の神々とも深い関係を持っています。
イドゥンが管理する「黄金のリンゴ」は、神々に永遠の若さをもたらします。
このリンゴが奪われたとき、神々は急速に老化し、力を失いかけました。そのため、ロキはリンゴを取り戻すために奮闘することになります。
トールと関係の深い木として、オーク(樫の木)が挙げられます。
オークは雷神トールの神聖な木とされており、古代ヨーロッパでは雷が落ちることが多い木として信じられていました。雷神トールの象徴として、神聖視されていたのです。
北欧神話では、植物は魔法や呪術とも密接に関わっています。
北欧の呪術では、セイヨウオトギリソウが特別な力を持つとされていました。
この植物は、悪霊や呪いから身を守るとされ、戦士たちや旅人が護符として身につけることがありました。
北欧の伝承では、マンドレイク(マンドラゴラ)も魔法的な力を持つ植物として語られています。
この植物の根は人間の形に似ており、引き抜くと悲鳴を上げるという伝説があります。そのため、特別な儀式を経て収穫されることが多かったのです。