


北欧神話の神々の降臨
アース神族やワナ神族を想起させる神々が天空から舞い降りる情景。
北欧神話の荘厳さと神話世界の躍動感を表す一枚。
出典:『The Northern Gods Descending』-Photo by William Gershom Collingwood/Wikimedia Commons Public domain
北欧神話って、ただ「神さまがたくさん登場する」だけじゃないんです。
その神々は、実は三つのグループに分かれていて、それぞれがまったく違う役割や性格をもっているんですよ。
戦いや秩序を司る神々、自然や愛を象徴する神々、そして人間には理解しきれないような巨大で原始的な存在──そう聞くと、なんだかすごく世界が広がって感じませんか?
というわけで、この章では北欧神話に登場する神々を、アース神族・ヴァン神族・巨人族という3つの系統に分けて、それぞれの特徴と代表的なキャラクターたちを紹介していきます!
誰がどんな役割で、どんな神なのか、楽しく見ていきましょう!
|
|
|

遊びに興じるアース神族の神々の挿絵
世界樹ユグドラシルのもとで、オーディンやトールをはじめとするアース神族の神々が、建設や遊戯にいそしむ。ヴォルスパの冒頭に描かれる、平和な時代を象徴的に描いた図。
出典:『Æsir games by Frølich』-Photo by Lorenz Frolich/Wikimedia Commons Public domain
北欧神話の中心にいるのが、このアース神族(エーシル)。
「神々」と聞いてまず思い浮かべるのは、たいていこのグループに属する神さまたちです。
代表的なのは主神オーディン、雷神トール、そしていたずら者のロキ。彼らはアースガルズという場所に住み、世界の秩序を守るためにさまざまなことに関わっていきます。
アース神族は、たんに戦うだけの存在じゃありません。 知識や魔法、言葉の力を重んじるオーディンのように、「どう生きるか」という哲学を持った神も多いんです。
この系統の神々は、正義感が強くてかっこいい──だけじゃなく、ときには失敗したり、悩んだりもします。 完全無欠ではなく、人間味があるからこそ魅力的なんですね。

ヴァン神族の豊穣神フレイと猪グリンブルスティの挿絵
豊穣と平和を司るヴァン神族を代表する神フレイが、黄金の鬣を持つ猪グリンブルスティとともに描かれ、自然と実りの力を象徴する姿としてヴァン神族の性格を端的に示す一枚。
出典:『Freyr』-Photo by Johannes Gehrts/Wikimedia Commons Public domain
アース神族とは別に、もう一つ大きなグループがあるのをご存じでしょうか?
それがヴァン神族(ヴァーニル)。自然や生命、愛といった「人が生きるうえで欠かせないもの」を象徴する神々です。
戦いのイメージが強い北欧神話ですが、実はこのヴァン神族がとても重要な役割を果たしています。
アース神族とヴァン神族は、昔大きな戦争をしていたんです。
でも、長い争いのあとに和平が結ばれ、今ではアースガルズに一緒に住んでいる神もいます。
たとえばフレイやフレイヤ兄妹は、このヴァン神族の代表。 自然の豊かさや恋愛感情、生命の力を象徴する存在で、物語の中でもとても人気があります。
力ではなく調和、奪うよりも育てる──そんな生き方を教えてくれるのが、ヴァン神族なんですね。

炎の剣を掲げる巨人族スルトの絵画
ラグナロクでムスペルの軍勢を率いる火の巨人スルトが燃え盛る剣を振りかざし、
世界を焼き尽くす破壊の力を象徴的に描いた一場面。
出典:『The giant with the flaming sword by Dollman』-Photo by John Charles Dollman/Wikimedia Commons Public domain
最後にご紹介するのは、ちょっと異色な存在。
それが巨人族(ヨトゥン、あるいはヨーツン)です。彼らは神々の敵のように語られることもありますが、実はもっと複雑な立場なんですよ。
巨大な力を持つ存在であると同時に、神々と深く関わることもある──そんな不思議な存在なんです。
巨人族は、たとえば火や氷、嵐など自然の原初的な力を象徴する存在です。
神々と争うこともあれば、結婚したり、子どもをもうけたりすることもあります。
たとえば、トールの母も巨人族の出身ですし、ロキ自身も巨人族にルーツを持っているんですよ。 だから「敵」か「味方」かだけでは語れない、グレーな存在として描かれているわけですね。
破壊と再生のバランスを象徴する存在──それが巨人族なんです。
神と巨人、そのあいだの線引きがあいまいだからこそ、北欧神話には深みが生まれているのかもしれません。
🌌オーディンの格言🌌
わしらの物語に登場する「神々」とは、ただ力を誇る存在ではない。
それぞれが異なる役目を持ち、世界を編みあげる糸のごとく交錯しておる。
秩序のアース、恵みのヴァン、混沌のヨトゥン──三者の交わりがこそ、九つの世界を動かしておる。
争いもあれば、共に宴を囲む縁もある──その関係は、一枚の絵のようには割り切れぬ。
トールが巨人の血を引き、ロキが二つの血脈を渡るように、境界は常に揺らぎの中にある。
だからこそ、神々の姿には「人の心」が映し出されるのじゃ。
力とは剣のみに宿るにあらず──愛や知恵、そして自然の摂理すら、神々の一部として息づいておるのだ。
|
|
|
