


玉座のオーディン
鴉フギンとムニン、狼ゲリとフレキを従えており、
主神の動物との関わりの強さを象徴する作品。
出典: 『Odhin』-Photo by Johannes Gehrts/Wikimedia Commons Public domain
動物が大好きな人なら、一度は「神話のなかに出てくる動物ってどんな子たちなんだろう?」って思ったこと、あるんじゃないでしょうか。
オーディンの肩にとまるカラスや、トールの戦車を引くヤギ、世界樹ユグドラシルに巣食うリスなどなど……北欧神話の世界では、たくさんの動物たちが神々とともに、すごく大事な役割を果たしているんです。
じつはこの動物たち、ただの“かわいい仲間”じゃありません。力や知恵、破壊と再生といった、大きなテーマを背負った存在として描かれているんですよ。
というわけで、この章では「北欧神話に縁ある動物たち」というテーマについて、神々の聖獣・宇宙構造に関わる存在・終末を告げる獣──という3つのポイントに分けて、ざっくり紐解いていきます!
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フギンとムニンを従えてスレイプニルに乗るオーディンの挿絵
八本脚の馬スレイプニルにまたがるオーディンの周囲を、
世界中を飛び回って情報を運ぶ二羽のワタリガラス、フギンとムニンが取り囲む。
出典:『Odin, Sleipnir, Geri, Freki, Huginn and Muninn by Frolich』-Photo by Lorenz Frolich (1820-1908)/Wikimedia Commons Public domain
北欧神話の神さまたちは、それぞれに“パートナー”のような動物を連れていることがよくあります。
たとえば、主神オーディンにはフギンとムニンという2羽のカラスがいて、世界中を飛び回って情報を集めてきます。オーディンの知恵と深い思索を助ける存在ですね。
また、雷神トールの戦車を引いているのはタンングリスニルとタンングニョーストという2頭のヤギ。トールはこのヤギたちを食べたあと、骨と皮をちゃんと揃えておけば、翌日には魔法のように復活させることができたそうです。
そして、フレイヤが乗るのはネコにひかせた戦車。フレイヤは愛と美の女神ですが、戦いにも関わる神で、ネコはそのしなやかさや強さを象徴しているんです。
動物たちは単なるペットや乗り物ではなく、神々の性質そのものを表していたといえるでしょう。
こんなふうに、それぞれの動物たちは神々と強く結びついていて、まるで分身のような存在なんです。

世界樹ユグドラシルとその周囲の生き物を描いた挿絵
九つの世界をつなぐ巨大な一本の木として描かれた世界樹ユグドラシルで、
幹や根元にはさまざまな動物たちが集う姿が表現されている。
出典:『The Ash Yggdrasil』-Photo by Friedrich Wilhelm Heine/Wikimedia Commons Public domain
北欧神話の世界は、巨大な木──世界樹ユグドラシルによって支えられています。この木のまわりには、なんといろんな動物が住んでいて、それぞれが世界のバランスに関わっているんですよ。
たとえば、ユグドラシルの頂上にはワシがいて、全体を見渡しています。そしてそのワシと根っこのドラゴン・ニーズヘッグのあいだを行ったり来たりして、悪口を運ぶのがリスのラタトスクなんです。
また、ユグドラシルの枝には四頭のシカがいて、葉を食べながら、命の流れを象徴しているとも言われています。
こうした動物たちの動きや関係は、ただの生き物の営みではなく、この世界がどうやって保たれているのか、そしてどうやって壊れていくのか──そのサイクルを教えてくれているんですね。
世界樹という壮大な舞台のなかで、動物たちは静かにでも確実に、宇宙のめぐりを動かしているんです。

オーディンに襲いかかる巨狼フェンリル
死と終末を告げる北欧神話の獣。
ラグナロクで主神オーディンを飲み込もうと口を開いている。
出典:『Odin and Fenris』-Photo by Mabel Dorothy Hardy/Wikimedia Commons Public domain
北欧神話でもっともドキドキする話といえば、やっぱりラグナロク(神々の終末)でしょう。
そしてこのラグナロクを語るとき、どうしても欠かせないのが、災厄のしるしとして登場する巨大な動物たちなんです。
中でも有名なのが、ロキの子どもたちであるフェンリル(巨大な狼)と、ヨルムンガンド(世界蛇)。どちらも神々によって封印されていたのに、最終的には解き放たれて、大きな混乱を引き起こします。
フェンリルは主神オーディンを飲み込み、ヨルムンガンドはトールと死闘をくり広げ、両者ともに命を落とします。さらに、空を真っ黒にして飛び回る火の巨人の馬なども、世界の終末を盛り上げる存在です。
このように、破滅や変化を運んでくる存在として、動物たちはときに“境界をこえる者”として描かれるんですね。
でもこれは、悪いことばかりじゃありません。終末のあとには、新しい世界が生まれるともいわれていて、そういう意味では「破壊=再生の始まり」なんです。
神話に登場する動物たちは、私たちの想像よりずっと深く、そして意味深い存在なんですね!
🐾オーディンの格言🐾
わしらの血脈において、動物は「従える者」ではなく「共に歩む者」なのじゃ。
フギンとムニンの羽ばたきが、わしの思索を導いたようにな。
世界樹をめぐるシカ、リス、竜──彼らの営みこそが「宇宙の鼓動」そのもの。
動物たちは、神々の鏡であり、未来の兆しを運ぶ使い手でもある。
トールのヤギは力の循環を示し、フレイヤのネコは優雅なる戦の本質を映し出す。
ラグナロクの狼や蛇にすら、終わりを越えて「始まりを告げる役目」が託されておる。
我らが物語には、言葉を持たぬ彼らの声が確かに響いておるのじゃ──耳を澄ませ、心で聴くがよい。
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