北欧神話の「9つの世界」とは

北欧神話の宇宙観は、単純な天地創造とは異なり、「世界樹ユグドラシル(Yggdrasill)」を中心とした9つの世界によって成り立っています。これらの世界は、神々、人間、巨人、妖精、死者などが住む異なる領域であり、それぞれが独自の役割を持っています。

 

  • アースガルズ(Asgard):アース神族の世界。
  • ミッドガルズ(Midgard):人間が住む世界。
  • ヨトゥンヘイム(Jotunheim):巨人たちの世界。
  • アルフヘイム(Alfheim):光の妖精(ライトエルフ)の世界。
  • スヴァルトアルフヘイム(Svartalfheim):闇の妖精(ダークエルフ)の世界。
  • ヴァナヘイム(Vanaheim):ヴァン神族の世界。
  • ニヴルヘイム(Niflheim):氷と霧の世界。
  • ムスペルヘイム(Muspelheim):炎の世界。
  • ヘルヘイム(Helheim):死者の国。

 

本記事では、北欧神話の「9つの世界」について詳しく解説します。

 

 

北欧神話の創世記とは?

北欧神話の宇宙は、最初から存在していたのではなく、混沌の世界「ニヴルヘイム」と「ムスペルヘイム」の衝突によって誕生しました。その中心に生まれたのが、世界樹ユグドラシルと、それを取り巻く9つの世界です。

 

北欧神話の創世記
  • 原初の氷の国「ニヴルヘイム」と炎の国「ムスペルヘイム」が存在。
  • 両者の境界で最初の巨人「ユミル(Ymir)」が誕生。
  • オーディンたちがユミルを倒し、その身体から世界を創造。
  • 世界樹ユグドラシルの下に、9つの世界が広がる。

 

北欧神話の「9つの世界」とは?

北欧神話では、世界は単なる一枚の大地ではなく、ユグドラシルの枝や根の下に広がる異なる領域として描かれます。それぞれの世界には異なる種族が住み、独自の役割を果たしています。

 

北欧神話の「9つの世界」一覧
  • アースガルズ(Asgard):アース神族の住む神々の世界。
  • ミッドガルズ(Midgard):人間の住む世界。
  • ヨトゥンヘイム(Jotunheim):巨人族(ヨトゥン)の世界。
  • アルフヘイム(Alfheim):光の妖精(ライトエルフ)の世界。
  • スヴァルトアルフヘイム(Svartalfheim):闇の妖精(ダークエルフ)とドワーフの世界。
  • ヴァナヘイム(Vanaheim):ヴァン神族の世界。
  • ニヴルヘイム(Niflheim):氷と霧の世界。
  • ムスペルヘイム(Muspelheim):炎と灼熱の世界。
  • ヘルヘイム(Helheim):死者が行く冥界。

 

1.アースガルズ:神々の世界

アースガルズ(Asgard)は、オーディンをはじめとするアース神族が住む神々の国です。

 

アースガルズの特徴
  • 神々が住む壮大な宮殿が建ち並ぶ。
  • ヴァルハラ(Valhalla)には戦死した勇敢な戦士が集う。
  • ビフレスト(Bifröst)という虹の橋でミッドガルズと繋がる。

 

2.ミッドガルズ:人間の世界

ミッドガルズ(Midgard)は、人間が住む世界で、神々が創造した大地です。

 

ミッドガルズの特徴
  • 海と陸地に分かれた、人間が暮らす世界。
  • ヨルムンガンド(Jörmungandr)が大地を取り巻く。
  • 神々によって守られ、ビフレストでアースガルズと繋がる。

 

3.ヨトゥンヘイム:巨人族の世界

ヨトゥンヘイム(Jotunheim)は、巨人族(ヨトゥン)が住む世界で、神々と敵対する者たちが暮らしています。

 

ヨトゥンヘイムの特徴
  • 荒れ果てた山々と深い森が広がる。
  • ロキやスリュムといった巨人が住む。
  • 神々との戦いや策略が繰り広げられる。

 

4.アルフヘイム:光の妖精の世界

アルフヘイム(Alfheim)は、光の妖精(ライトエルフ)が住む美しく輝く世界です。光の妖精は美しく、神々に近い存在とされており、豊穣や芸術に関わる力を持つといわれています。

 

アルフヘイムの特徴
  • 美しい森と輝く宮殿が存在する。
  • 光の妖精たちはフレイに仕えている。
  • 神々との関係が深く、特に豊穣の神フレイと結びついている。

 

5.スヴァルトアルフヘイム:闇の妖精とドワーフの世界

スヴァルトアルフヘイム(Svartalfheim)は、闇の妖精(ダークエルフ)とドワーフが住む地下の世界です。北欧神話において、ドワーフは優れた鍛冶師として知られ、多くの神々の武具や宝物を生み出しました。

 

スヴァルトアルフヘイムの特徴
  • 地底の洞窟や鉱山が広がる。
  • ミョルニル(トールの槌)など、神々の武具が作られた。
  • ドワーフたちは優れた職人であり、魔法の道具を生み出す。

 

6.ヴァナヘイム:ヴァン神族の世界

ヴァナヘイム(Vanaheim)は、ヴァン神族が住む世界です。ヴァン神族は、アース神族と異なり、自然や豊穣、魔法の力を司る神々の一派とされています。

 

ヴァナヘイムの特徴
  • 自然が豊かで、川や森に恵まれた土地。
  • フレイ、フレイヤ、ニョルズなどが属する。
  • アース神族との戦争後、平和協定により神々の間で交換が行われた。

 

7.ニヴルヘイム:氷と霧の世界

ニヴルヘイム(Niflheim)は、冷気と霧が支配する世界で、北欧神話の世界の起源の一つとされています。ギンヌンガガップ(虚無の空間)の北側に位置し、ムスペルヘイムの炎と混ざり合うことで生命の源となる物質が生まれたと伝えられています。

 

ニヴルヘイムの特徴
  • 氷と霧に包まれた極寒の世界。
  • ヘルヘイムと隣接し、死者の世界とつながる。
  • 原初の霜の巨人・ユミルが誕生した地。

 

8.ムスペルヘイム:炎の世界

ムスペルヘイム(Muspelheim)は、炎と灼熱に包まれた世界で、火の巨人たちが住む領域です。この世界の主は、ラグナロク(終末の日)に神々と戦うスルトという巨人です。

 

ムスペルヘイムの特徴
  • 燃え盛る火と溶岩に覆われた世界。
  • 火の巨人スルトが支配し、終末にアースガルズを焼き尽くす。
  • 世界の創造時に、ニヴルヘイムの冷気とぶつかり合い、ユミルが生まれた。

 

9.ヘルヘイム:死者の国

ヘルヘイム(Helheim)は、死者が行く冥界であり、死の女神ヘルが支配する場所です。戦場で勇敢に死んだ者はヴァルハラへ行きますが、病気や老衰で死んだ者はヘルヘイムへ送られるとされています。

 

ヘルヘイムの特徴
  • 暗く冷たい世界で、生者は滅多に訪れない。
  • 女神ヘルが支配し、死者の魂を見守る。
  • ラグナロクの際、ヘルの軍勢がアースガルズに攻め込む。

 

ギムレー:ラグナロク後の理想郷

ギムレー(Gimlé)は、ラグナロク後に生き残る新しい楽園とされます。

 

ギムレーの特徴
  • 黄金の屋根を持ち、太陽の下で輝く。
  • 戦いや死のない、新しい平和の世界。
  • ラグナロク後、正しき者たちが住む場所。

 

ラグナルク後の新たな世界では、ギムレーが最も美しい場所として描かれており、金で覆われた屋根を持つ館が立ち並びます。そして正義と平和が支配するこの地には、善良な人々が住むと言われています。ギムレーは、新たな始まりと希望の象徴として、北欧の伝承において重要な役割を果たしているのです。

 

現代における「9つの世界」の影響

北欧神話の「9つの世界」の概念は、現代のファンタジー作品やゲームにも大きな影響を与えています。

 

ファンタジー作品での登場

  • 『マイティ・ソー』シリーズ:アースガルズやヨトゥンヘイムなどが登場。
  • 『ゴッド・オブ・ウォー』:9つの世界を旅する冒険が描かれる。
  • 『ロード・オブ・ザ・リング』:北欧神話の世界観に基づく地形設定。

 

北欧文化との関連

  • スカンディナヴィア地方の伝承に、9つの世界の概念が根付いている。
  • ヴァイキングたちは、9つの世界が現実のどこかにあると信じていた。
  • 「ユグドラシル」は、今も生命や宇宙の象徴として使われる。

 

北欧神話の「9つの世界」は、単なる神話ではなく、宇宙の構造そのものを表す壮大な概念です。神々、人間、巨人、妖精、死者など、それぞれが独自の世界に住み、北欧の人々にとって現実と密接に結びついた神話体系を形成しているのですね。